おとぎ話


こんな景色見たことない。新年代のおとぎ話
決死の覚悟で届けられた、名曲だらけの3rdアルバム


 2000年、バンド結成。銀杏BOYZ、YO-KING、TOMOVSKY、曽我部恵一、フラワーカンパニーズ等との共演により徐々に評価を得る。2007年に1stアルバム『SALE!』、2008年に2ndアルバム『理由なき反抗』を発表。2009年は、5月に『青春GALAXY ep.』を。3月に『Disney Rocks』トリビュートに参加。9月にもフラワーカンパニーズの『深夜高速 -生きていてよかったの集い-』に参加。そして待望の3rdアルバムが完成した。

『FAIRYTALE』
UK PROJECT (UKFT-006)
1/20 Release

 今回、誌面とは別にweb限定、インタビュー完全版【全曲解説】をお贈りします。実は4人でのインタビューも初ということで、おとぎ話というバンドのグルーヴも伝わってくるインタビューになっていると思う。

有馬和樹(Vo/Gt)  牛尾健太(Gt)  風間洋隆(B)  前越啓輔(Ds/Vo)



  もう本当にオンリー・ワンだと思いました

■今日は4人でインタビューということで。
有馬:
みんなでインタビューするの初めてですよ。ほんと嬉しいです。
■なかなかレアな感じですが、発言したい方は各自発言した方がいいかと、僕は振らないんで(一同笑)。まず、アルバムを聴かせて頂き、本当にいいアルバムができましたね。
一同:
ありがとうございます。
■何回、聴いても飽きない。
前越:
分かっとるね〜(笑)。でも、分かっとるわけでもないんだけどね。その通りなんすよね。
有馬:でも、そうっすよ。
■どの曲も完成度高くて、一曲も飛ばせない。
有馬:
おっ! ありがとうございます。
■元々僕は、おとぎ話に悪い点は無いと思ってるんですが、それでも今思えば、2ndアルバムは、色々と演りたい事があるのも分かるんですけど、ちょっとトッ散らかってたアルバムかなっていう。
有馬:
このアルバムがあるから思える事かな。でも、今までは一個のアルバムを作ってた感じはそんなないよね。
風間:そうだね、曲単位ではあっても。
有馬:最終的に曲があって一個のアルバムになってた。だからCDを作る上で、みんなで会議して、この曲が今回のアルバムで必要だとかを、今までした事がなかったんすよ。
■ミーティングをした事なかったと。
有馬:
深いミーティングもした事ないし、レコーディングの日だけ(UK PROJECTスタッフに)決まったよって言われて、その日に向けて、ある曲を演ってただけなんすよ。だけど、今回は選べんだからね。今の自分らにはこれが必要だって。
風間:そうだね。曲選びの時間はかかったね。
有馬:それが制作面で一番違うところだから。だから1stと2ndはそういう意味で、トッ散らかったアルバムだったかも。
■あまりトータルで考えずに作っていたと。
有馬:
今、自分らが何をしたいか?で作ってた。でも今回はアルバムが見えてたもんね。
■それはアルバムを作る前からイメージを描いてたってことですか?
有馬:
まぁ同時進行だったかな。
風間:曲をなんとなく選んでいる時に、みんなアルバムの全体像がぼんやり見えてたのかも。曲がどんどんできていく内に、そのぼんやりが明確になって行った感じは、すごくあると思う。今までは曲が並んだ時に、初めてアルバムの全体像が見えたんだけど、今回は制作の途中で形が見えてた。
有馬:今までと違う点を、もうひとつ言うと、アルバムを作る時に元からあった曲、ライブでも演ってた曲が入ってないとか。入れてもいいんだけど入れてない。
風間:ああ、そういう選択肢もね、あった。
■曲はどんどん作っていたんですね?
有馬:
曲はもう常に作ってるんすけど、今も作ってるし、それがより円滑に進んでる感じですね。
牛尾:削った曲もあるんすけど、流れを考えて新たに録音前に作った曲とかもあって。
■09年は春に『青春GALAXY ep.』出して、トリビュートも『Disney Rocks』とフラカンの『深夜高速』があって。とは言え、アルバムは結構、待たされた感がありましたね。
有馬:
そう、個人的にも09年中に出るアルバムだと思って制作してたから、まさか1月になると思ってもなかったんですけど……僕らとしては曲を作ってて、止まってる訳でもないから、突き進んでるんだけど、1月リリースという状況になってしまった。でも待たせた分、満を持して出せるアルバムにもなってるし、今まで作ったアルバムに比べると、ちゃんとステップアップできたし。今年はディズニーのトリビュートから、次の『青春GALAXY ep.』。で、『深夜高速』のコンピが一番デカいね。自分らが曲作る時の決め事だったりを、一度、全部リセット出来たんですよ。その上で4人で話し合ってレコーディングに向かえたっていう。『青春GALAXY ep.』を作った時も、まだ1st、2ndアルバムの流れに追っかけられてた感じはあったから。“深夜高速”を録るにあたって、全バンド同じ曲だから、その中で一番いい曲にしたいと思った時に、4人に共通した意識が芽生えた感じがしますね。今までに無い何かが生まれて、それが圧倒的なオリジナリティとして出て。深夜高速のコンピレーションを聴いた時に、フラカンはおいといて(笑)俺らが一番だって思えたんですよ。
■はい、一番よかったです。
有馬:
僕も実際、そう思った。そこで自分達のアイデンティティーが確立されて。それを竹安さんが激賞してくれて。
前越:竹安さんが、すごい褒めてくれたんです。
有馬:嬉しかったっすね。そこで、こういうやり方、音の作り方、歌い方、メロディの乗せ方だったりが、おとぎ話だって思えましたね。もう本当にオンリー・ワンだと思いましたからね。
■なんかもう、自分達の曲みたいな感じでしたもんね。
有馬:
そうそう。
前越:コンピもらって聴いて、たくさんいる中で圭介さんはおいといて(笑)有馬が一番、歌えてましたね。自分の歌にしてたし。
■有馬君なりのメロディにしてですね。
前越:
コード進行も、自分の得意なコード進行にして。
■とにかく、そこで何か掴んだと。
前越:
そうですね、そこでコツをね。
有馬:4人とも見つけた感じしたよね。
牛尾:2ndまでの流れだと、ああいうアレンジで出せなかったと思うんですよ。
前越:スカスカじゃないっすか?
有馬:そうそう、だから今まで全部、足し算してた。
牛尾:ベーシックでも有馬君と俺、2人ともギター弾いてて。でも、それが“深夜高速”では――。
有馬:引いたよね。何が要らないかを考えて曲を作った。その流れで3rdアルバムに行ったんですよ。だから、余計な要らないモノをどれだけ除外できるかっていう。まぁみんなでガー!って演奏してる曲もあるんだけど、その中でも要らない感情だったりを除外する事を、4人がしてた感じがする。
■そういう事を掴んだんですね。
有馬:
それが一番、大きかった気がする。
■今回、資料として有馬君の曲解説も頂いたので、これも含め伺います。やっぱり1曲目“WHITE SONG”、これができたのが大きかったですかね?
有馬:
そうかも知れませんね。今までも曲作りで悩んだ事もないし、サラッとできたと言えばサラッとできた曲なんですけど。Bメロの展開が今までの曲とは違うから重たいんです。この曲を作った時に前ちゃんが「これをメインに出せるバンドはカッコいい」って言ってくれて、そこから進んだっていうか。
■具体的に何が良かったんですか?
前越:
まぁおとぎ話でもゆっくりめなバラードで……初めて聴いた時、なんかストレートだったんですよね。別に誰かに似てるから似せちゃダメとかじゃなくて、本当に有馬が歌いたいように歌ってる感じがしたんですよね。素直な感じだった。
牛尾:俺もアコギで最初に聴いた時、特にサビがすごくいいなあって思った。これは、いい曲になるなあって思ったんですけど、まさかその時は、こういうアレンジになるとは思いもしなかった。
有馬:うん、サビも五転六転したからね。
■共同プロデューサーとして、Spitzなどを手がける竹内修さん(wilsonic)が参加されて。
前越:
タケちゃんマン?(一同笑)。
■竹内さんと、あとキーボードに元カーネーションの棚谷さん参加されて。
前越:
棚やんがね(笑)。
有馬:あの棚やんが(笑)。
■そういうのも、全部プラスになってますよね。
有馬:
プラスになりましたね。
牛尾:素晴らしい。
有馬:最初は竹内さんに手伝ってもらうのも本当に嫌だったけど。
前越:知らない人がスタジオに来るみたいな(笑)。
風間:どう対応していいかがわからないし。
牛尾:経験なかったですからね。
有馬:でも最初から友達として入って来てくれたところがあったよね。最初に上から「じゃあ、みんな演奏してごらん」みたいな人じゃなかったから(一同笑)。そういう人のイメージあるじゃん。
■ああ、プロデューサーって。
有馬:
そんなんじゃなくてよかった。音楽大好きな方なんで友達みたいに話ができてよかったよね。「前ちゃん、あれ聴いたことある?」とか「やっぱり、風間君は知らないんだね」とか、最終的に風間君のこと、けなして帰ったもんね(一同笑)。
風間:俺の掴み方が解ってた。
■ああ、そこまで親密になれたと。
有馬:
もう本当に友達感覚で楽しかったですよ。棚谷さんも素晴らしい方でしたね。
■“WHITE SONG”のキラキラした感じと、スケールの大きい感じがアレンジに出てますね。
有馬:
そうですね。曲を解体されたりはしなかったですよ。棚谷さんが「おとぎ話って実は、4人だけで完結してるバンドだから、何かを変えるのは違うと思う」って、最初に言ってくれたのも、自信になったし。だから逆に、棚谷さんと竹内さんが考えつかない事をするのが、俺らだなぁと思って、4人はひたすら重く演奏しました。
牛尾:本当にそう。
有馬:そういう演奏してるんだけど、できあがったモノに、棚谷さんがキラキラした音色を加えていったら、ああなったんすよ。
牛尾:なんかストリングスとかも、有りかなみたいな。
■その過程で、サビのメロディも変わったとかもあって、最初はもう重い感じの方向性だったんですね?
有馬:
そういうわけでもないんですけど……重いというより、どっしりしてるかな。
■うんうん、タイム感がですね。
有馬:
タイム感っていうか……オアシスとかって、いい曲なのに重く演奏するじゃないですか。なんかそんな感じ。
牛尾:王道感っていうか。
■ああ、そうですね。
有馬:
タバコ吸ってないのに「すげー、タバコ吸って演奏してるぞ」みたいな感じっていうか(一同笑)。
■まぁなんとなく解りました(一同笑)。
前越:
竹内さんが棚谷さんを紹介してくれて、って経緯なんすけどね。それで僕らは、純粋な気持ちで空を見て演奏していた。
有馬:ああ、歌詞ね。
前越:歌詞もいいからね。「特別な気持ちで〜」って素直な感じじゃないっすか。そういう気持ちで演奏したら、なんか上モノがキラキラしてたっていう。
有馬:そうしてくれとも言ってないし、そのアレンジに対して何も言ってないし。
■この曲が始まると、なんか視界が広がる感じがするんですよ。
有馬:
おおー、クリアな感じですね。
■はい。アルバムもスケール大きく感じられるっていうか。
有馬:
そうですね、あの1曲目だと、そうなりますよね。
■あと、この歌詞で一番引っかかったのが、やっぱり「まだ見ぬ君に この歌が届けばいいな」っていう。
前越:
おとぎ話の新たなファン獲得みたいな(一同笑)。
有馬:卑しい(笑)。
■今のおとぎ話の、ちょっと苦しい現状を表してるのかなっていう。
有馬:
まぁでもそれは出ますよね。
前越:色んな人に聴いてほしいなっていう。
有馬:だってね、おかしいですもん。おとぎ話がこんな苦境に立たされてるのとか、単純に意味が解んないですからね。ほんと、こんな謙虚に音楽をやってる人達が、この日本の音楽業界の中で、どんだけいるんだって考えると、普通にいないもん。
前越:そうそう。
有馬:例えば自分の友達の前野(健太)君だったりが、もっと知られていいと思うけど、知られないのは何だろか?と思って、俺らが頑張らねばいけないって思ってやってますね。例えば、おとぎ話がもっと売れれば、俺の友達とかも売れるかもしれないし。
■ああ、もう後ろにつかえて待ってると。
有馬:
そうそう。だから早く一歩前に出たいんですけどね。今の現状って、自分の事で精一杯の人が多すぎて。例えば、おとぎ話と対バンしてくれるバンドもいるんですけど、そういう事をやる人達が、もっと増えてほしいっていうか。だからアジカンってすごい。例えば、neco眠るとか自分の友達をZeppとかに呼ぶって感動的。
牛尾:トクマルシューゴとかも出てたしね。
有馬:そうだよね。自分らもそういうバンドになりたいですね。
■すごく大事だと思いますが、まずは自分達ですね。
有馬:
そう。まず、そういうアルバムを作ることが大事で。例えばフェスに出て、へこへこして「CD聴いてください」って渡して対バンするとかじゃなくて、とにかくいい曲作って、いいアルバムを出して、いいライブをして、誘われるバンドにならなきゃいけないから。だから今まで有名な人と対バンをして、その人に音源を渡すのとかが優先になっちゃいそうだった時があって。そうじゃないんだって、今回のアルバムで気づかされた。アルバムを作ってから、今まで対バンしたかった同世代の人達、例えばlostageやOGRE YOU ASSHOLEやトクマルシューゴとかからもイベントに呼ばれるようになったり、嬉しい事が続いて。やっぱり自分が書いてる曲、演奏、おとぎ話を支えている全ての要素が重要で、そこでちゃんとした音楽を奏でれば、いい結果がついて来ると信じてやってます。信じないとヤバいんで。信じられない世の中だから。
■そうですね。あと“WHITE SONG”は、今の季節、冬の澄んだ空気にぴったりで。だから“WHITE SONG”だと思いますが。
有馬:
でも違うんすよ。“WHITE SONG”って曲名にした意味は、色が限定されない曲だねってことで、このタイトルにしたので。でも別に季節感を限定してないから。
■そういうことなんですね。
有馬:
僕、曲を書く時、唯一意識してる季節は夏なんすよ。
■夏が好きなんですね?
有馬:
んー、暑いのとか嫌いなんですけど、夏とか海って、全てのパワーが集約されてる気がして、本当に宇宙な感じがして。
■全ての源みたいな?
有馬:
海とか夏とか、そういう景色を描こうとすると、もっと大きなモノになるっていうか。結果的に何も描かれていないキャンパスみたいな白いイメージになった。好きな人にこれを聴かせたら「“WHITE SONG”って曲名どうかな?」って言われて、それで決めた感じですね。実はそういう曲でした。
■分かりました。勘違いしてました。
有馬:
いやいや、でもこの季節に“WHITE SONG”って名前で出したら、みんな勘違いしますよね。でも、僕にもはっきりわからない部分もあるので、聴いた方に好きなように受け取ってもらえれば。

  サブ・メンバーもすごい。でも全部メインですけどね

■では2曲目以降ですが、全曲飛ばせないんで、どんどん訊いていきます。
有馬:
はいはい(笑)。
■“ファンファーレ”、有馬君の解説にもあるように、サッカー部だった頃の風景を描いたような、胸キュンな1曲。
有馬:
そうっすね。これも夏ですね。元々のタイトルが“スプリンクラー”でしたからね。
■ああ、でもそんな歌詞ですもんね。
有馬:
あと、やっぱりドラムかな。あのリズムが全てですね。
■あのグルーヴはいい。
前越:
そうっすか?(一同笑)。これ、ビートルズの“Tomorrow Never Knows”って曲と、同じリズムなんすけど、そのドラムを叩いてたら、他のメンバーが勝手に演奏し出して、この曲ができたんすよ。
■確かに“Tomorrow Never Knows”ですね。
前越:
そう、リンゴ・スターのコピーしてたら“ファンファーレ”が出来上がったんすよ(一同笑)。
■それは強調して言うことですか?
前越:
はい。リンゴ・スターの真似してたら“ファンファーレ”が出来上がったんすよ。
■分かりました(一同笑)。
前越:
3回くらい言ったからデカい太文字で「リンゴ・スターの真似してたら“ファンファーレ”が」って書いといてください。
有馬:4回目だね(笑)。
■まぁ、ドラムの人なら、みんな叩きそうですよね。
前越:
うん、そうっすね(一同笑)。
■いい曲だと思います。続いて“妖精”。これも、なんかもうビートルズから、グランジ、オルタナ、グラムまで。
有馬:
あ、それ全部言っちゃいました。元々、あの本当はダイナソーJr.みたいな曲を作ろうと思ったら、風間君がそんな感じには全然弾けなくて。
風間:解かんないっすもん。
有馬:うーん、それで消去法でこういうアレンジになったっていう。
■ダイナソーのベースってそんなに、なんか違うんすか?
風間:
あのグルーヴが出せない。
牛尾:裏の感じがね。
有馬:おとぎ話の中で風間君だけ、あまり音楽を聴いてこなかった人なので。誰かに憧れて、ベース弾いたってわけでもなかったから。
風間:そうなんですよね。いい曲だなとか、いいベースラインだなって思う曲はあるんすけど、そこまで誰がっていうのは。
有馬:ひとつだけあったよね。前ちゃん以外の3人でサイモン&ガーファンクル観に行ったんすよ。その時、首の上でベース弾く人がいて(一同笑)。
風間:こんなんすよ(笑)。
有馬:その人を見た時に、ヤベーつって。
風間:その翌日、ベース持ったら、ちょっと感じが変わったんですよ。
牛尾:ちょっと上手くなった。
有馬:ベースの位置も上げたら、上手くなったんすよ。
風間:なんか気持ちが入りました。
有馬:だから、初めて影響受けた人だよね。
牛尾:なんて名前なの?
風間:名前知らない(笑)。
■なんかサポートの上手い人みたいな。
有馬:
S&Gの黒人だよね(笑)。風間君は黒人のノリが好きなんだろうね。そう思った。だから変に俺が持ってる、ジャンク感ある曲とかは、風間君にはいいやって思いましたね。もっとどっしりとしたベースは結構いいんすよ。だからそういう曲ほしいなって時は、牛尾がベース弾いて、風間君はキーボードって手もあるからね(笑)。
■臨機応変にですね
有馬:
これからは、色んな事ができると思うんで。
■続いて“E.T.M.”。勢いあるスカッとした曲で、有馬君的にも達成感あるみたいですね?
有馬:
ほんと5秒くらいで作った曲ですから(一同笑)。スタジオで4人で合わせて作った時もほんの30分くらい。速攻でできた曲だから、達成感しかないっすよ(笑)。
前越:「EVERYDAY 単純 前へ」な感じは出てますね。
有馬:そこに集約されてるかもしれないですね。
■はい。「EVERYDAY 単純 前へ」で“E.T.M.”で、キャッチコピーとしてもいいですね。
前越:前とか言って……(笑)。ちょっと変ですよね。
■ちょっとアレな人みたいな感じですけどね(一同笑)。
有馬:
そこの辺がいいですね。なんか漫画っぽい。「ちびまる子ちゃん」みたいな。
■伝わるんですが、活字にすると伝わらないかも(笑)。
有馬
:まぁCD聴きながらJUICE読んだら、解る感じかな。あとは歌詞で「愛の厳しさ」って言ったところですよ。
■それも成長と呼べますかね。
有馬:
成長ですね。愛を厳しいって言えるようになりましたからね。盲目的に恋しようぜって言えないようになりましたから。
■そういう深みも出たと。
前越:
責任がね……(一同笑)。
■まぁそこは追求しないで、次の曲行きますか。では“コトバとコトバ”。
前越:
これは、キタね。
■僕の中で勝手に思ったんですが、おとぎ話らしい曲かなと、メロディ、アレンジとか。
有馬:
ずっと前からあった曲なんですけど、自分の中で煮え切らない部分があって、最終的にこのアレンジに落ち着いたんすけど。本当は“GALAXY”と、この曲をシングルにして、その2、3ヶ月後に“青春”のシングルを出して、全部入ってるアルバムとして、今回のアルバムを作りたいと思ってたから。
■最初の構想がですね?
有馬:
最初の構想として、そう思ってたのが、できなかったんで。残念ながらCDがあまり売れてないんで。それで、この曲がどんな曲か考える時間ができて、最終的にこのアレンジになりましたね。この時、牛尾がすごい悩んでたね。
牛尾:これは一回録ったんですけど、次の日録り直した。
■何が気に入らなかったんですか?
牛尾:
いや、もう悩みすぎてたのがギターに出ちゃってて、今回のアルバムを出す時、絶対、後悔したくなかったんで。これでアルバムに入れるのはキツいなと思って。次の日気合い入れて録り直しました。結果的にはすごく良くなった。
有馬:おかしくなってて本当に迷ってた。何も言えない状態にも陥ってたから。
前越:J-WALK状態。何も言えなくて……。
有馬:何も言えなくて、夏!(一同笑)。
風間:分かんねー、それ(笑)。
有馬:悩んでたけど、今まで弾いたのを全部消去して、また一から作り直したお陰で、元々、ライブで演ってた感じとは全然違うふうになりましたね。
牛尾:この曲がいいのはコード4つしかなくて、3分くらいに収まってる。ポップソングとして、すごい。
前越:痛快だよね。
有馬:うん、痛快、痛快。
■こういう曲が5曲目に入ってるのが、今作の層の厚さじゃないっすかね。
一同:
おお!
有馬:そうなんです。サブ・メンバーもすごい。でも全部メインですけどね。
■では“I LIKE SPORTS”。これまたスカッとするカッコいい曲ですね。
前越:
これも痛快。
牛尾:これ、嫌いな人いないんじゃない?
有馬:そう思う。こんな曲、日本に無いっすよ。今まで色んなアルバムとか曲があると思うんすけど。多分、発明だと思いますよ。こういうふうに日本語が乗るって。
■僕もこれは、すごくいいと思いました。要は90年代鎮魂歌。グランジ、ブリットポップ、有馬君が解説に書いているサッカーのベルカンプって、よく知らないですけど、その辺がごちゃ混ぜになったような。
有馬:
ベルカンプの感じっていうのは、絶妙なボールの止め方をしてる曲なんですよ。すごい球が来た時、見事なトラップで自分の目の前に止めてゴール決めるオランダ人。
前越:あいつは凄いよ、ベルカンプは。怖くて飛行機乗れないけどね。
有馬:そうそう。そういう曲を作りたいと思って。技のデパートみたいな曲。
■ベルカンプはよく判りませんが、僕はアルバムの中でも、この曲は好きですね。
有馬:
屈指の名曲ですね。
前越:歌詞もいいし。
牛尾:こういう曲って、僕ら高校生の時に聴いてたBlurの“song2”とか、ああいう感じもある。でも日本のバンドには、こういう曲が全然無くて。そこが上手いこと、できてるんじゃないかな。
有馬:上手くできてるね。
■要はBlurだと、“Song2”以降が好きなんですか?
牛尾:
いや、僕はもうBlurは全部好きです(一同笑)。
有馬:牛尾は、高校の時に広島から、ひとりでフジロックに見に行くくらいにBlurは全部好きです。

  2009年の前半、うまく行かない事が多くて、本当に死にたかった

■“泣きだしそう”が名曲ですね!
有馬:
おお!嬉しいっすねぇ。
■これもうアコーディオンからいいですし、また歌詞がいいですね。
有馬:
本当そう思うんですけどね。今回本当ね、映画とかの主題歌にする為のプロモーションとか、もっとみんな命懸けてした方がいいと思ってますけどね。おとぎ話ってそういう曲が多いんすよ。主題歌とかなってもいいなぁとか。
■確かに。しかも結構、壮絶な映画ですね。
有馬:
うんうん。なんか誰かに言われるの待つの面倒くさいから、もう自分らで行きますよ(一同笑) 大林宣彦監督とかに「アルバム作りました」ってさ。そういうの必要だね。こういう曲が埋もれるのおかしい。
前越:こういうの声優さんとかに歌わしてさ、実は俺らの曲だったんだって、後から出てくるのもいいよね。「世界が終わる前に〜♪」って。
有馬:いいね。誰かに歌わせといてね(笑)。
前越:そういう感じで歌わせといて。
風間:なんだこの曲?
前越:で、実はおとぎ話(笑)。
■歌詞はギリギリ、心境としては崖っぷちですが。
有馬:
本当に、そうっすよ。
■それを、そういう人に歌わせたいと(苦笑)。
有馬:
でも“泣きだしそう”はあれ、終末思想みたいなもんだから。もう世界なんて、いつでも終わるんだって事を歌いたくて作ったんだけど、その前に何がしたい?って、恋人に会いたいし、恋人の顔は何に似てるのかと思ったら、見たことのない素晴らしい景色なんじゃないかな?と思って作った曲だから。こういう曲が埋もれんのほんと嫌なので。だから「これは名曲っすね」って言ってくれるの、すごく嬉しい。
■多分、ギリギリな死にそうになってる人は、みんな刺さるんじゃないっすか。
有馬:
本当、そういう人がCD買うくらいのお金があれば(笑)。でもね、そういう人にも届いてほしい。届かせなきゃいけないんすよ。僕らはそういうライブを演ってるし、あとはもう、おとぎ話を出してくれてるレーベルだったり、僕らを載せてくれるメディアやリスナーが、本気でおとぎ話はいいから「なんとかしようぜ」って思ってくれるかどうかに、かかってるんですよね。
■はい。それと歌詞ですが「泣きそうな景色を見るまでは死ねないや」、ここいいっすね。これも、今のおとぎ話を表してる気がします。
風間:
超前向きな。
有馬:風間君が前向きって捉えてくれてるのは嬉しいだけど、どっちかって言うと後ろ向きなんすよね(一同笑)。実は僕、2009年の前半、うまく行かない事が多くて本当に死にたかったんで。そういう時に、こういう曲が歌えて、この歌詞が書けたのは、良かったなと思います。
■2009年を一生懸命に生きていたという証というか。
有馬:
証ですね。……棚谷さんのマイルス・デイビス風なアコーディオンも入ったりして。
牛尾:パリの風を吹かせて。サウンドとしても、こういうアコースティックな曲を形にできたんで。
前越:前は無かったですからね。
牛尾:有馬君だけの弾き語りくらいしか無かったから。
■続いて“superstar”も新機軸ですけど、曲もキャッチーですが歌詞がいい。ご自身と照らし合わせているようで、第三者の立場で書いた歌詞。
有馬:
そういう感じですね。自分自身なのかもしれないし、でもそうでもないっていうか、自分をピエロに見立てているし。あと……これを書いて録音した後に、忌野清志郎さんや、マイケル(・ジャクソン)とか、(ミッシェルの)アベさんも亡くなったし。そういう面では、時代に近づいていた曲なのかもしれないですね。
■今年、亡くなられた方が多かった訳で、色々と考えさせられたんですね?
有馬:
そうですね。この曲はできてたんすけどね。だからこの曲を歌う意味が、4人で演奏する意味があったんだなって思って。もうカタルシスの塊みたいな曲だし。沸きあがるか、沸き上がらないかって感じの曲。
■最初のAメロで、溜める感じもいいですね。
有馬:
ずっと溜まってますからね(笑)。ハジけてもデカい音を出してる訳でもないんだけど。リズムがまず変わるし。
牛尾:音数は少ない。必要最低限な。
有馬:コードも少ない。
牛尾:ストイックだね。
■やっぱ、言うことがカッコいいっすね(一同笑)。
牛尾:
そうかな?(笑)。
■前越君も、ギターソロの前半でギター弾いてるらしいですね。
前越:
そうっす。
有馬:名ギターソロが(笑)。
前越:ガチンコです。
有馬:もうその一言だな。ガチンコ・ギターソロ!
前越:頼むから、みんなに聴いてほしい。スーパースターの魂の叫びですよ(一同笑)。
牛尾:間奏にも、物語を感じるような。 最初、前越君のギターはスーパースターの苦悩みたいなのを表していて、そこから有馬君が「スーパースター」って言って、そこで変わって。
■変わって?
牛尾:
そこで僕が弾いて、スーパースターがそっから、また立ち上がるみたいな(一同笑)。
前越:スーパースターの苦悩と、スーパースターのカタルシスをギターソロで体現。
牛尾:体現したっていうか。
前越:それ、俺が今言ったよ(笑)。
■細かい説明、ありがとうございます。では“ハートのうた”。
前越:
こうやって訊いてくと1曲1曲、層厚いね!
有馬:層が厚い!
■ひとつも飛ばせないっすよ。
有馬:
まだまだ残ってるからね。すごいね!
■これ、ニュアンス的には昔の歌謡曲っぽいんですけど。
有馬:
C & Aっぽいっすね(一同笑)。
前越:それ、前も言ってたけど、よく分かんないだけど(笑)。
風間:俺も分かんない。
■ちょっといいですか? 昔の歌謡曲っぽいですが、C & Aって感じではないです(笑)。
有馬:
ああ、そうかそうか。ならよかった。元々、キー低くして歌ってた時に、C & Aっぽいなって思って。ライブで歌うの少し恥ずかしくて。
■昭和っぽいんすけど、それが古臭く聴こえない。
有馬:
前のアレンジは古臭かったんすよ。なんか嫌だなって思ってた時に、前ちゃんが、「じゃあ、このリズムに合わせて演ろうよ」って言われて、あのイントロのリズム出してくれたんすよ。
前越:ちょっと跳ねてるじゃないですか。
有馬:そうしたら、なんか曲が踊りだして。
■「曲が踊りだして」って、いいですね。
有馬:
本当に踊りだしたよね?
前越:曲が踊りだしたんすよ、本当に。
有馬:本当に、冗談抜きで。そう、曲が踊りだして。
■それもう、何度も言ってます(笑)。
有馬:
こういうふうに歌ってくれって言われた気がします。そこからは悩まずに、一発でできましたね。
前越:いきなり、笑顔の歌になったよね。
有馬:うん。急に笑顔になった。最初、C & Aっぽい、湿っぽかった感じが(一同笑)。
前越:なるほどね!湿っぽいって意味ね。
有馬:それが、なんか苦手で。俺そういう人間じゃないから。
前越:そうなんないでよかったね。本当に。
有馬:でもC & Aは好きなんすよ(笑)。
■続いて“こどものブギー”。このミディアムなテンポ感がいいですね。まどろんだ感じというか。
有馬:
うん、まどろんでるんだろうな。歌詞も結構、抽象的なんで。
■ちょっとサイケデリックな。
有馬:
自分らの中では、インストに近いのかもしれないっすね。歌い上げるっていうより演奏してる、ブレーメンの音楽隊っていうか。
■おとぎ話は元々、こういう面も持ってますからね。上手く形になった曲だなぁと。
有馬:
そうですね。そんな形が爆発してるんだけど、でもこの曲は、デカい音で爆発してるんじゃない感じ。

  これ作ったんだぞ!って責任を感じるアルバム

■“BOY'S BEAT”は、有馬君の解説だと、おとぎ話にとって重要な1曲で、前作の“FAN CLUB”への回答とのことで。バンドらしい、楽しさにあふれた曲ですね。
有馬:
これはバンドやる醍醐味ですよ。4人でバンドやるのに。多分、今まで作ってきた曲の中で、一番重要な曲だと思う。
■おお、どういう意味でそんな重要なんすか?
有馬:
迷いがないんですよね。そう、誰も迷ってない。アレンジとか「こうしようぜ」って話すらしてないし。自分らでやってた時、演ってて楽しければいいじゃん。ショボけりゃいいじゃん、とか。そんなことを考えた気がする。
■「ショボけりゃいいじゃん」っていうのも出せるくらい、だったと。
有馬:
そうなんですよ。全部、自分らの今を綴じこめて。すっごい曲なんだよね。
前越:ホントすごい曲。
風間:制作の話をすると、練習スタジオとかでほとんど合わせてないんですけど、実際レコーディングする時も、そこまでガチガチな感じじゃなく「じゃあ、ちょっと演奏してみようかぁ」って流れで録って。「これ、いいから」って、それがそのまま。
■この日にこの曲を録る、とかではなくですね?
風間:
そういうのは全然無くて。それが、なんかいい具合にまとまった。
有馬:そうだよね。いきなりデカいこと言うと、日本中の人が聴いた方がいい。それぐらいの曲だと思いますね。
牛尾:でもほんと、サビのメロディがいいし。一回聴いたら、耳から離れない。誰でも口ずさめる。
■そんな曲ですら、11曲目に入っているっていう。
有馬:
そうそう(笑)。でもこれ、すげー面白い話があって。この曲がアルバム1曲目で始まってたら、誰も買わないって前ちゃんが言ってました(一同笑)。このバンド無いわって(笑)。
前越:どうしようもねーなって(笑)。
有馬:それは、すげー面白かった。
■まぁ11曲目に入るべくして、入ったと。
前越:
そう、流れがいい。
有馬:でも、おとぎ話がドーンと売れた時、後でこの曲がシングル・カットされちゃったりするんじゃねぇかな?って感じの曲ですね。
■後々ですね。では“ロードムービー”。これはブルージーなスローバラードで、いい曲ですね。あの、ギターがいいですね。
有馬:
これはギターがすべてだね。この時は牛尾は演りきってた。ほんと録音ブースで、みんな聴いてたけどさ、泣けたもんね。本当にいい歌だ。
牛尾:ちょっとクイーンのブライアン・メイ意識したんすけどね。
有馬:いやぁ、こういうギターソロ弾いてる人いないっすからね。今の日本の同い年のバンドで、こんなギターソロのあるバンドいないっすよ。
■そうですね。
有馬:
ギターソロがまず無いから、今。かっこいいギターソロ弾いてる20代ってほとんどいない。ギターソロがいいバンドっている?
前越:(フラカンの)竹安さんくらいだよ(一同笑)。でも40歳だ。
有馬:竹安さんのギターソロは本当にいい。ガチでいいんだよね。
前越:すげー、カッコいい。
■竹安さんはコンパクトにも長くも、ちゃんと泣けるギターを弾けるっていう。
有馬:
そうそう。まず、カッティングの仕方がいいんだよね。
牛尾:竹安さんの話になってる(笑)。
前越:ほんとカッコいいからね、竹安さん。こないだの野音のワンマンでTシャツがよれよれだったけど(笑)。
有馬:でも今ね、純粋に泣かせようとしてるバンドが少なすぎて、踊ろうぜー!って四つ打ち、縦ノリで。だからこれは、みんなに対するアンチテーゼですね。このアルバムは。本当はロックは、そんなんじゃないんすよ。僕、前にハイロウズを観た時、すごく感動した事があって、ヒロトさんが縦ノリの曲をバーって演ってて「ロックンロールってのは家で聴いて、いつも寂しいなとか、そういう気持ちを紛らわせる為のモノでもあるんだけど、フェスの会場に来ると、本当に音楽好きな人こんなにいるんだって思って、嬉しくなるよね」って言って“青春”を始めた時があったんですよ。それとか全てで、ヒロトさんは「盛り上がろうぜ」なんて一言も言ってないんすよ。だから、本当のロックだったりするんじゃないかなって思って。
■要は、セオリー通りじゃなくていいと。
有馬:
そう思いますね。フラカンみたいにもっと人の感情に訴えかけるようなバンドが増えてほしいね。
■で、牛尾君はそういうギターを弾いていると。
有馬:
あのギターは、めっちゃアンチですよ。ほんとこんなの無いぞっていうギターソロ弾いてますね。
■確かに。それで、ラストの“青春(naked)”。
有馬:
nakedヴァージョン。
■ビートルズを彷彿させるタイトルになってますが、これは何故、ミックスを変えようと思ったんですか?
有馬:
元々、シングルと同じミックスで入れても、聴いてる人、面白くないでしょう。自分がもしリスナーだったら「じゃあ、入れなくてもいいじゃん」って思ったりするんですよ。だから、せっかくなら違う形に、いい感じになればいいなと思ってミックスし直してもらって、それが上手い事ハマりましたね。聴いた時に新しい一面が見えて。ライブで演ってる時の自分らの演奏も見えてきて泣けたんで、もう入れるしかないと。
■具体的にはどう違うんすか?
有馬:
アンプから出てる音のみになってます。リバーヴ感っていうか、なんかドヨーンとした感じをなくして、タイトにした。だからnaked、元々の演奏っすね。
■はい。というわけで全曲解説に突入させてもらいましたが、それで僕が思ったのは、この3rdアルバムを聴いて、これでダメだった人は、もうおとぎ話は一生好きになれないんじゃないかと。
有馬:
そうっすね。もう、それぐらいの気持ち。100万人中全員に良いって言ってもらえるバンドなんていないし、そんな人間なんて1人もいないんだから。でも本当におとぎ話が好きで、求めてる人は、聴いてもらえるアルバムだと思うんですよ。それで、ずっと好きでいてくれるようなアルバムだと思うから。今、僕らができることは、1個1個のライブに命かけて、来た人をとにかく感動させるライブをしなきゃいけない。それを周りの人達、おとぎ話を応援しようと思ってくれる人達を、どんどん増やさなきゃいけないと思ってて。そうすれば、大きな流れになるはずだし、大きな何かを生むはずだと思ってるんですよね。
■アルバム名もおとぎ話を、英語にしたセルフ・タイトルみたいなもんですが。
有馬:
もうセルフですね。
■それもそういう意志表示、勝負作の表れですかね?
有馬:
そうですね。正念場だってことです。そういうアルバムになったんで、うん。これで半年後くらいに、結果が出る出ないとか、そういう話をしてたら、もう、やってる意味ないんで。もう、このアルバムから、やっていかないといけない事が、色々とあるから。本当に、ようやくっていうか、何度もスタートラインに立ってるんですけど、また、デカいスタートラインに立った気がしますね。2010年になるんで、新しい10年が始まるんで。
■そうですね。新しい年代が。
有馬:
00年代は終わるんですよ。もう、そうじゃないっていうか。
■その幕開けにふさわしいと。
有馬:
ほんとそう思うんですよ。そういう名盤になってると思うし。
前越:なんか責任感じるよね。このアルバム。
有馬:そうだね。責任感がありますね。
前越:これ作ったんだぞ!って。
有馬:それ、一番重要かもしんない。
■リスナーと自分達に対しての責任ってことですね。
有馬:
だからこのアルバムに関しては、後で「これが売れなかった」って話もしないだろうね。今まではそういう話したけど、もう届く人には絶対届くから、その努力をみんな絶対するアルバムを作ったわけだから。で、2010年の終わりに「これが売れない」とか、まだそういう話を僕らがしてたら、もう、やる意味ないっすね。ってぐらいの責任感がある。
■分かりました。今後の展望、遠い未来でもいいので、教えてください。
有馬:
僕の夢っていうか、やりたい事は、4人でアコギと太鼓を持って、アフリカとかの先住民の前で演奏したいんすよ。そういう音楽を全く聴いた事のない人の前で、音楽を演りたい。赤ちゃんの前でとか。それが最終的にやりたい事ですね。
■はい、それもいつかできれば、ですね。
有馬:
それはいつかの展望ですけど。その前に日本でまだ何もやってないんで(笑)。毎回、取材で言ってるんすけど、おとぎ話を本当は聴きたいのに、クラスの友達とかが聴いてないとか、自分の街のCD屋さんに置いてないからって人、たくさんいると思うんすよ。そういう人に聴かせたいですね。それは叶えたい。だって、そんなこと言っても、ライブハウスは全都道府県にあるから。だったらできるんじゃねーかなぁって思いますね。
■それは僕も協力したいっすね。
有馬:
そうっすね。一緒にやりましょうよ。
■はい。最後に何か一言ずつ。
前越:
まぁ竹安さん一緒に遊んでください(一同笑)。
■すごくピンポイントですね。
前越:
竹安さんと牛尾をギター・バトルさせたりしたいなーって。
牛尾:ああ。
有馬:それが一番近い目標だね。竹安さんと牛尾、VSギター漫談みたいな。
風間:漫談なんだ(笑)。
有馬:ギターバトル、出演者2人みたいな。俺ら散々酔っ払えるイベントをしたいっすね。
牛尾:いや、それくらいのギタリストにならないとダメだと思ってるんで。だから“ロードムービー”のソロもそうですけど、チョーキングする時も顔で弾くし、チョーキング一回するだけでも、それに命懸けるぐらいに。
有馬:逆にギタリストとしては「あんなのテキトー、テキトー」とか軽く言ってのける。
牛尾:テイク・イット・イージー。
有馬:そう言えるぐらいのね(笑)。で、調子悪い時でも「今日、褒められちゃったよ」とかツアー車の中で言えるような、そうなりたい。
牛尾:いいね。
有馬:それすごくいいバンドだよね。
牛尾:ストーンズみたいにずっとかっこいいバンドになりたいね(笑)。
■では、最後に風間君、ビシっと。
風間:
おとぎ話は人を感動させられるバンドなんですけど、もっと感動させられるポテンシャルを秘めてるバンドだから、これからもっと頑張っていきたいですね。

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Interview&Text : 田代 洋一