踊ってばかりの国


『世界が見たい』がカウンターとなり時代を変える!さぁ、サイケデリアの宇宙へ!

 この国の危機感の無さはなんなのだろう? 3.11の東日本大震災以降、次々と浮き彫りになる理不尽なできごと。何を根拠に大丈夫なのか? 政治家も役人も学者も評論家もマスコミも、どこまで信じていいのか? 世の中が、どんどん悪くなっている気がする。そんな現状をしっかり直視しながら、それでも気持ちいい音楽を、カウンターとなるべきロックを鳴らしている意識の高いバンドもいる。例えば「踊ってばかりの国」だ。気持ちいいサイケデリアの海からメッセージを投げかける。彼らは3.11以降というより、元からそういうバンドだった。特にバンドのフロントマンで曲を書く下津光史は、まさに「踊ってばかりの国だった日本」の固定観念を無意識にぶち壊そうとしていたのかもしれない。だからこそ、現在、日本に必要なレベル・ミュージックとして機能する。
 改めて、バンドのこれまでをふり返ってみる。2008年、神戸にて結成。2009年に自主制作盤1stミニアルバム『おやすみなさい。歌唄い』を手作りで制作し、ツアー先にて一週間で500枚を売り上げる。2010年3月に2ndミニアルバム『グッバイ、ガールフレンド』をリリース。同年、FUJI ROCK FESTIVALやRUSH BALLなど大型フェスに出演。2010年11月に『悪魔の子供/ばあちゃん』、2011年1月に『アタマカラダ』という2種類の枚数限定シングルを発売し既に完売。2011年2月にギターの滝口敦士が脱退。2011年3月には1stフルアルバム『SEBULBA』をリリース。4人体制になったバンドは全国ツアーを敢行。初のワンマン公演も大盛況に終える。この夏は、RISING SUN ROCK FESTIVALやRUSH BALLに出演。そして、前作から7ヶ月という驚異的なスピードで、今作『世界が見たい』が完成した!
 踊ってばかりの国が現れた頃、音楽性に関して各方面から「忌野清志郎やフィッシュマンズの佐藤伸治を彷彿させる」などと評された。僕もレビューを書く度に、そう書いた。もちろん称賛する意味で。けれど、彼らは「まったく影響を受けていない」と公言していた。それが今回、下津に質問を投げかけた取材ではっきりした。彼らのサイケデリック・ロックは、60〜70年代から時空を超えて、現在の海外シーンと地続きの地平で鳴っていたのだ! あの胸騒ぎは洋楽・邦楽も関係無い本物感だったのだ。そして今作ではアシッド・フォーク的なグルーヴも追求した。心地よくやわらかいサウンドとアンサンブルの妙が冴え渡り、歌の世界観は日本から世界へ開かれている。もっと言えば、サイケデリアの宇宙へと開かれている! ただ、当の本人はどこかシニカルな表情だ。ならば、僕らが心を解き放ち、意識を高く持って、踊ってみせればいい!


「自分の人生にやっと意味ができましたね」

 

■アルバム『世界が見たい』聴かせていただきました。最高のアルバムですね! その前にまず、今年二月にギターの滝口さんが脱退されましたが、脱退の理由としては?

下津:
音楽性の違いです。音楽的に完全に両極端に行ってしまったのが、大きいかな? 彼はジム・オルークのようなノイズ系にどっぷりで、こっちはメロディーが立っている音楽をやりたかったんです。

■ちょうど、前作の『SEBULBA』をリリースした頃でしたが、バンドは動きを止めることなく、ライヴを行い、今作に繋がる新曲作りに突入したようですが、迷い無く四人体制で行こうという感じだったんでしょうか?

下津:
バンドを止めることはまったく考えなかったです。むしろ、バンド活動をするにあたって、四人の方がいろんな物事の話がスムーズにいくと思いました。

■四人体制となって、変化があったこととしては?

下津:
音がすっきりしました!歌のメロディーも個々の楽器もはっきり聞こえるし。音楽が始まるぞって感じっすね。

■前作から約七ヶ月という短いスパンでリリースされる今作ですが、何がそこまで制作に向かわせたのでしょうか?

下津:
欲ですかね! 制作意欲満タンやったんで。実はまだ曲があるんですよ。でも今回はここまでで止めておこうかと。

■三月十一日の東日本大震災で起きたことが、今作に大きく影を落としていると思いましたが、いかがですか?

下津:
地震にノンリアクションな人間ってあんまりいないですよね? 僕もそのひとりなんで! なので、歌詞においても影響はしています。

■下津さんは尼崎出身ですが、かつて阪神大震災を経験しているのも大きいんじゃないかと思いますが。

下津:
それはありますね。東京で今回のも喰らったんで、人生で二度、大きな地震を体験することはまず少ないですからね。潜在意識の中にそういったものがインプットされているのかな? それが自然にアウトプットされてるって感じっすかね。

■かもしれませんね。それと、下津さんのツイッターを拝見したところ、震災以降、原発事故に関するツイートも結構、見受けられましたが、やはり懸念される問題でしょうか?

下津:
ツイッターはギャグの一環でやらせてもらってるんで、正直ナメてます(笑)。ただ地震のことなどに関してはシリアスにならざるを得ないですよね。小さい子供がいる家庭がありますし。

■そもそも、固定観念や慣習に疑問を持っているというのが根底にある気もしましたが。

下津:
それはありますね。日本の文化とか詳しく分からんし、一般の考え方とかはあまり分かりませんね。特に東京の文化とかは全然分かりません。なんでこんなに人のことを気にしないんだろうと。少しくらい興味示せよって感じっすね。

■また、下津さんにお子さんが生まれたのも人生観や価値観を変えるような出来事だったんじゃないですか? ちなみに僕は一昨年、子供が生まれて人生観が変わりましたけど。

下津:
おめでとうございます。子供は最高ですよね! わかります! 自分の人生にやっと意味ができましたね! そこらへんも歌詞に若干影響はしているんですけどね。

■では、ここ最近、好きで聴いている音楽、アーティストなどありましたら、教えてください。

下津:
最近は、ジェームス・ブレイクとかタイラー・ザ・クリエーターとか、ドープで洗練されたものにはまっています。先端の音楽はすぐにYouTubeなどでチェックしますね。

■それらがダイレクトに反映されたのが、今作なのかなと思いましたが。

下津:
確かに海外のアーティストから大きく影響を受けることはありますね。踊ってばかりの国に関しては、日本語のポップに、どれだけ多幸感豊富にぶちこめるかなんで、サイケデリアが共通点ではないかと。

■『グッバイ、ガールフレンド』、『SEBULBA』と作品を重ねる度に、サイケデリアを追求されてきたと思いますが、今作でより独自のサイケデリアを発明したのではないでしょうか?

下津:
ありがとうございます! いっばいぶっとんで正解でした!(笑)。録り音やミックスには、いっぱい口をはさみましたからね。

■そのサイケデリック感の違いがあるとすれば、どういった部分でしょうか?

下津:
ケミカルな飛びとナチュラルな飛びって感じですね! 今回はナチュラル。


「気持ち良さとメッセージの間を行ったり来たり」

 

■タイトル曲世界が見たい≠ヘ、リズムは力強く響き、辛辣な歌詞はとても刺さります。下津さんが見たいという「世界」とは、どういう世界なんでしょうか?

下津:
国際社会ですね。日本以外の思想はどんな感じなんかな、とか。まあ、直球な言葉で政治的なことはダサくて書きませんけど。自分らなりの表現なので、それを感じとってくれたらと思いますね。

■また、ここで言う「アナタ」とは、具体的に誰を差してますか?

下津:
これは、第二次世界大戦時のアメリカです。一人称「ボク」は、その時期の日本です。

■そんな歌詞で、世界が見たい≠ニいう曲名、アルバム名に込められた意図は?

下津:
意図はないですね。僕の好きなようにやりました。一曲目がアルバムタイトルってのもいいもんかなと。

■そうですか。!!!≠ヘレゲエのリズムを採り入れてますが、それはどういうことから?

下津:
単純に気持ち良いだけですよ! ダブとかではなくて、サイケのレゲエを意識しましたけど。

■言葉も出ない≠ヘかなりポップな曲ですが、あまりにも容赦無い歌詞が刺さりました。EDEN≠竍反吐が出るわ≠ネども救いが無いですが、なぜ、ここまでの絶望や虚無を表現するのでしょうか?

下津:
絶望とかじゃなくて、ロックには容赦なんて必要ないと思います。

■では、現実を直視しろ! という警鐘もあるのでしょうか?

下津:
それはありますね。国家に、個人にも向けています。

■以前から下津さんは「死」について歌っていると思いますが、そこを掘り下げるのはなぜですか?

下津:
周りの人達が割と死にかけたり、死んだりしていたこともあって。自分も何度も死にかけているんで、住んでいた土地の体験談的な感じですかね。掘り下げているという感覚は無いです。

■ドブで寝てたら≠竍反吐が出るわ≠竍何処にいるの?≠ヘサウンドも相まって美しくもあります。下津さんの生死観が決してネガティヴなものではないから、と思いましたが。

下津:
死にたいやつは勝手に死ねや、生きたいやつは全力で生きろよって感じです。

■サイケデリック・ロックを演っていても、決して現実逃避のために鳴らしてないということでしょうか?

下津:
その狭間ですね。気持ち良さとメッセージの間を行ったり来たり。

■またドブで寝てたら≠竍悪魔の子供≠竍お涙頂戴≠ナは、アコースティック楽器の鳴りが、かなり計算されて録られているなと感じました。空間の鳴りを活かそうとしたからでしょうか?

下津:
まったくそれですね! エアー感を大事にしたいですからね。

■今作は、音に生々しさがありつつ、単純に聴いていて疲れない。気持ちいいです。

下津:
ありがとうございます! 聴いてて、苦になる音楽なんか意味ないっしょ! うちのバンドは気持ち良さしか提供しませんよ。マスタリングで一度アナログテープに落としたのが、滑らかで太い音になった要因かもしれません。それがまた耳心地よさを生むんですよね。


「バンド結成当初からスタンスは変わっていない」

 

■踊ってばかりの国は、以前からサイケデリック・ロックというよりアシッド・フォークという印象がありますが、そこも追求されたのかなと。

下津:
単純にアシッド・フォークが好きなんですよ! 僕が。

■例えばよだれの唄≠リアレンジしたり、悪魔の子供≠アコースティックで収録し直したのも、アシッド・フォーク的なグルーヴを追求した結果なのかと思いましたが。

下津:
この二曲は完全にアシッド・フォークノリです。大正解。

■そもそも、下津さんはアコギを持って歌いますが、ずっとエレキでなくアコギなんですか?

下津:
エレキも使いますよ。曲の用途に応じて使い分けています。

■また僕はカメレオン≠竍EDEN≠竍セレナーデ≠ネどはサウンドの立体感が違いますが、こういう曲調とサウンドだけのアルバムも聴いてみたいと思いました。いかがですか?

下津:
ネオサイケのアルバム作りたいですね! いずれ引き出しから出してやりたいですね。

■また最後の曲にボーナストラックTonight≠ヘ生々しい歌と深いエコーが印象的です。収録した意図としては?

下津:
それはオマケって感じで、次の作品の予兆的な。実は『グッバイ、ガールフレンド』の時も取り入れています。

■今作は制作期間が短いにも関わらず、出し切った感があるんじゃないですか?

下津:
いや、まだまだやりたいことがありますよ! 山のように! 曲のストックもまだありますし。だから早く新曲録りたいっす。

■今作は聴く人によってはレベル・ミュージックとして、音楽シーンにはカウンターとして機能すると思うんですよ。

下津:
そうじゃないとロックバンドの作品とは言えないんじゃないですかね? 少なくともうちらはバンド結成当初からそのスタンスは変わっていないですね。

■では、この作品は今後、どのような意味を持つと思いますか?

下津:
引き出しを増やす、方法を増やすいいキー・ポイントって感じです。

■現在、三ヶ月連続2マンを開催されてますが、そのアイデアはどういうところから?

下津:
好きなバンドと戦いたかったからです。もちろん負ける気は毛頭ありませんが。

■今後、全国ツアー等は予定されてますか?

下津:
わからないです。すぐ制作に入るので。とにかく新しい曲を、タイムラグをなるべく無くしてリリースしていきたいので、そちらを優先したいです。

■皆さんにとってライヴは、どういう場だと思っていますか?

下津:
最高のサイケデリアを再現する場所です。

■最後に今作をリリースすることで、どういう世界になることを望んでますか?

下津:
どうにもならないでしょう。俺の思想はこうやけど、あんたら知らんで、って感じです。



Interview & Text : 田代 洋一

 

liveinfo


11/9(水) shibuya eggman
[3ヶ月連続2マンシリーズ]vol.2
出演:踊ってばかりの国 / sleepy.ab(2マンライブ)

12/5(月) shibuya eggman
[3ヶ月連続2マンシリーズ]vol.3
出演者後日発表

詳細は http://od-kuni.com/ にて

releaseinfo『世界が見たい』
11/2 Release
mini muff records
MDMR-2018


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