カゲロウ


これぞ、大人のインスト・ハード・コア。
中空を暴れまわる音符を捉えろ!

 カゲロウのファースト・アルバム『KAGERO』を聴いてみた。ドラムのリズムが鋭角に切り込み、ベースがうねり、サックスが飛び跳ね、そりゃあもう、踊りださずにはいられない作品だった。インタビュー中にもメンバー自ら認めているけど、これはパンク・バンドだ。スーツ姿で伊達にキメているけど、ひょっとして鎖帷子なんじゃないか。JUICEも協力しているInter FM「76 Records」で、毎週送られてくる、数多くのデモの中からピックされた猛者だ。行け!

■Ruppa君とは長い知人で、「カゲロウ」ってバンドをやっているのは知ってたんですね。でも、初登場になるので、ぜひ今までの経緯を聞かせてください。
Shiromizu:2005年の春に結成して、最初のライブは出来たばかりのライブハウスで、いきなり自分たちの友達のバンドを集めての自主企画で(笑)。ジャンルも関係なく。
Ruppa:友達集めて、客も友達で。
Shiromizu:そうそう。もともとはスタジオでセッションをしてて──スタジオでやってるのが楽しかったんですよね。演奏するのが。やっぱりメンバーそれぞれ、いろいろバンドで経験があったり他でしてる中で、一番楽しいっていうのかな。でも経験則的に一番楽しいものっていうものは、なかなか人に聴かせる、人のリアクションを求めるものじゃなかったんですよね。もともとは。
Ruppa:自分らが楽しくて、別に聴く側がどう思おうと、あんまり気にしてないっていう感じで、遊んでた。
Shiromizu:あんまり見せるもんじゃないって思ってた。カゲロウのライヴって(笑)。やってて楽しいから。そう思ってたから、もともと別に表に出るバンドではないと思ってた。
Ruppa:4人集まって、音楽で遊ぼうよって。
Shiromizu:そういう感じだったんだけど。それがその初ライヴのイベントでやった時から全然リアクションが凄くて。反響というか。それが始まりだね。やってる本質は4年前、5年前から変わんないし。自分たちが楽しいっていうクオリティを上げていくっていう作業は、ずっとこれからもそうだけど。あとはもう出会い。いろんな出会いの中でこういう環境になって、っていうだけだよね。
■で、今作に向かわれた訳ですが。
Shiromizu:これは、集大成というか。集大成っていうのもおかしいけど、結成の時から、今まで作った曲の中で、ライヴでよくやってる曲を選りすぐって作った曲で。アルバムのコンセプトも無いしね。ベスト盤だよね(笑)。
Ruppa:ベスト盤だね(笑)。
■自分らの中で(笑)。
Shiromizu:コンセプトが無いから、アルバムのタイトルを考えた時も、タイトルも付けられないから(笑)。じゃあ、カゲロウの『KAGERO』でいいかな、みたいな。
Ruppa:とりあえず全部出しちゃおうよっていう。
■でも、どのバンドに関してもファーストアルバムってそういうところがあるじゃないですか。それまでの集大成的な意味合いが。やはり、この12曲っていうのは、それこそライヴだったりとかいろんなセッションとかで磨き上げられたものだと思うんですよね。
Ruppa:そうですね。
■それでバンド名を冠したっていうのはすごくわかりやすいというか。
Shiromizu:なんかね、考えてみたんだけど全然やっぱりシックリこなくて。楽曲のタイトルを付けるっていう手もあったんだけど、別に作った曲たちへの思いは、どの曲も変わんないし。どれがピックアップっていうわけでもないけど。ただ1曲目に「SCORPIO」を入れて良かったなぁって思う。
Ruppa:うん。
■思い出深い曲というか。
Shiromizu:あれを作るまでは、「歌が無くていい」っていう割り切りができなかったんです。僕の作った歌メロをRuppaさんに吹いてもらってたっていう感覚はあったんだけど、「SCORPIO」を作ってる時に、「あ、歌、無くていいじゃん」って思えたんです。
■確信が持てたというか。
Shiromizu:ただ演奏の殺気がどうだ、パッションがどうだって言い出したのもあの曲ができてからで(一同笑)。あの曲ができてから、ライヴが疲れるようになった(一同爆笑)。
Ruppa:それまでは、汗をかいてなかったから(笑)。
Shiromizu:「SCORPIO」を作ってから完全にハードコアバンドみたいになって(一同爆笑)。
Ruppa:それまでは、スーツ着てそのままライヴやってそのまま帰ってたくらいだったのが。
■着替えずにはいられなくなって(笑)。
Shiromizu:もうビショビショに(笑)。スーツ持って帰る時に、あからさまに重くなってるんです(一同爆笑)。
■ははは(笑)。例えば、でも、ロックが好きな人にも分かりやすいフィジカルさですよね。
Ruppa:そういうところに、出来れば──食い込んでいきたいっていうか。「気にしなくていいじゃん!音楽なんだから!」って思う部分もあり。もちろん、歌詞があることによってわかりやすさっていうのもあるんだろうけど。
Shiromizu:その分、想像してもらえばいいし。どういう詞がのるかとか。
Ruppa:こういう気持ちで、音を鳴らしてるんだっていうのは、多分聴いてもらえれば伝わると思うし。
Shiromizu:僕らが「こうだ!」っていうつもりでやってるのが、相手、聴き手に解釈の余地があるのかもね。ライヴで同じ曲をやってても、「うぉー!」ってなってる人もいれば、固まってる人も、泣いてる子もいるし。それはもう別に相手の受け手に刺さってくれれば──どう刺さろうといいかなって思います。少なくとも、カゲロウのメンバーの中で、カゲロウのことを「ジャズ」だと思ってる人間はいないんですよ。
Ruppa:狭い意味の「ジャズ」ではない。
Shiromizu:ジャズっていうものはもっと違うものだし。まぁ、ジャズが好きなメンバーとかいるし僕も聴くけど、カゲロウは別にジャズじゃない。だから、自分の気持ちだけで言えばパンクですよ。ただのパンク。自分にとって、一番真っ当に聴こえるパンク。ファッション・パンクじゃなくて。でもどう言われようが構わないかな──前、あるCDショップで、説明に──。
Ruppa:“速いジャズ”って書かれてた(一同笑)。
Shiromizu:「まぁ、速いけど」みたいな(笑)。
Ruppa:“速いジャズ”ってどんな興味の示され方だろうって(笑)。
Shiromizu:だからどう言われても、僕が聞かれたら迷うことなく「パンクです!」って言うだけかな。
Ruppa:そうだね。パンクの人がジャズの編成でやってるからパンクっていう。
■なるほど。インストじゃない分、海外での活動は考えたりしたいんですか?
Ruppa:なんか、「ニューヨークとかロンドンに行った方が売れんじゃね?」みたいな話をされたりした時は、「いや、日本で売れなくて、そっちで売れてもしょうがなくね?」っていうことを思ったり。
Shiromizu:昔からやっぱり「アメリカに行けばいいのに」って言われるけど、別に日本でもやるよ、みたいな(笑)。日本でできないから、外に行くって考えはあんまり好きじゃないから。やっぱり日本人だし(笑)。日本でもできるし、世界もできるよっていう方が全然かっこいい。


Interview&Text : 林 拓一朗