|
ソリッドでタフな新たな到達点“GO”
それがノーナ・リーヴスからのメッセージ
95年、バンド始動。バンド名は熱烈なモータウン・マニアである郷太が、マーヴィン・ゲイの娘:ノーナと、モータウン伝説のシンガー:マーサ・リーヴスから、それぞれ組合せて、架空の女性シンガーをイメージし名付けた。96年にインディー盤『SIDECAR』リリース。97年にワーナー・ミュージック・ジャパンよりデビュー。以降、コロムビア〜トライエム(メルダック)〜徳間ジャパンと移籍を重ねつつも、ソウルフルなJ-POPかつダンス・ミュージックを生み出し続ける。代表曲として筒美京平プロデュースの“LOVE TOGETHER”、YOU THE ROCK☆フィーチャリングの“DJ! DJ! 〜とどかぬ想い〜”等がある。また郷太はプロデュース業や楽曲提供を、奥田と小松はサポート活動も多数手がける。08年12月より3ヶ月連続で配信シングルをリリース。そして2年ぶりのアルバム『GO』が届いた! 彼らなりのやり方で、譲れない部分はそのままに、確かな新境地を感じさせる全10曲を聴いてほしい。
2009年の今、どう見られたいのか?
■2年ぶりのオリジナル・アルバムとのことですが。
郷太:僕らとしては久々ですね。大体、毎年1枚は出していたんですが、各々のサポート業とかで忙しかったので。
■郷太さんのプロデュース業、奥田さんと小松さんのライヴやレコーディングの参加ですね。
郷太:小松や奥田は4、5年前から増えてきたんですが、彼らが忙しくなってきたのを見て、じゃあ、僕もやってみようかなと(笑)。プロデュースに本腰入れたのは2年ぐらい前から。『歌スタ』ってテレビ番組で審査員をしたり。まぁ自然に、2人も仲間のミュージシャンから誘われてやったのも多いし。来た話に対して、嬉しいから「やります」っていう。結果的にノーナ・リーヴスに有益になる事も多々ありましたね。
奥田:こっちを知ってる人が持ってきてくれる仕事が多かったので、いつものテンションでできましたね。
郷太:僕がプロデュースのシンガーで、演奏はノーナ・リーヴスみたいな事もあったり。
■フレキシブルな活動ですよね。ソロやサポートをやるバンドは珍しくないですが、ここまで上手く組み合わせてやっている例はあまり無い気がします。
郷太:そうですね。まず僕はソロをやってなくて、僕はノーナ・リーヴスで自分の音楽をフルでできている自覚があるんです。だから休止や解散、メンバー・チェンジも無く続いてきたとも思うんです。一方でサポートやプロデュース業が増えて、みんながバラバラになるバンドもあると思うんですが、ニューアルバムも空いたと言っても2年で出せているので。ノーナに関しては、両方が上手にできてると言ってもらえると嬉しいですね。
■サポートに関してどういう意識で参加してます?
小松:サポートをしてるというより、ノーナの流れの中で誘われて演っていた感じですね。アルバムは2年ぶりですけど、その間も月1本ぐらいのペースでライヴも演りながら、ずっと動いてはいたので。
■そこでやっぱり得るモノもありますよね?
小松:旅するような、色んな所に行って地元に戻ったら、ちょっと見え方が違うみたいなのはありますね。
■あと皆さんDJも頻繁にやられてますが、ノーナ・リーヴスが在るのは前提で、他の活動もやる感じですかね。
小松:両方やってる感はあまり無いですけどね。
郷太:小松は堂島孝平君、佐野元晴さん、大沢誉志幸さんと演ったり、奥田も土岐麻子さんとか多岐に渡っていて。僕もJackson vibeやthe ARROWSのプロデュースをやったり……僕がいつも思うのは、古田選手とかが監督しながら選手をやってた感じに近い。プロデュースとかするけど、自分も選手という。やっぱり監督やコーチ目線なのと、自分が演るのとは違うので。3人とも自分の守備範囲の中で忙しくしてたから、インディーでCD出してから13年続いているバンドで考えると健康的だと思いますね。
■今作は最初、どんなアルバムをイメージしてました?
郷太:どんな曲を作って歌いたいか? 大きく言えばノーナ・リーヴスってどんなバンドなんだろう? 2009年の今、どう見られたいのか?を3人とプロデューサーの矢野さんで、今まで以上に話し合って「家を建てるんだったら、どんな家にしよう?」って所から話し合って作りましたね。
■ポップなアルバムなので、もうダンス・ミュージックやブルー・アイド・ソウルとかにそんなこだわらなくても、よくなったのかなと思ったんですが。
郷太:なるほど。今回、みんなポップだって言ってくれるのが嬉しい誤算ですね。
奥田:今までは、ある一つの世界の中で音楽をやってたと思う。今回、ちょっと違う事をやろうとして、とにかく違う行動パターンをとったのもあって、その世界からはみ出たかもしれない。今までも僕ら、ポップな音楽とかマニアックな音楽とかを考え抜いてきたけど、全部その世界の中で考えてたんだなって。だから今回、ニュートラルに聴こえる人がいても納得できます。
■80年代っぽいフレーズやサウンドで狙ってる部分もあると思いますが、例えばそれまで狭いフロア向けだったのが、もっと広いフィールドで聴かれるイメージが浮かびました。
奥田:今までと違う発想で演ってるのがデカいですね。
郷太:シンセベースを使ったりして、僕らとしては音もハードになって。歌詞も“1989”や“Trans”とか裸になってる部分、パーソナルな歌詞も増えてるんで、それも広がった感じに繋がったのかも。
■配信シングル“Do_It_Again”もポップでしたしね。
郷太:“Do_It_Again”はJ-POP的ではないポップな感じ。僕らが子供の頃に見てた80年代のMTVの音楽とか。例えばバングルスの“マニック・マンデー”のようなポップ。今回、自分がなぜミュージシャンになろうと思ったか?って原点に立ち返った曲が多い気がして。そういうポップなモノを、以前よりロック的な視野で追求できましたね。
自信作のタイトルが“Hey, Everybody!”
■1曲目“A-ha”は、どこか80年代っぽいノリですね。
郷太:(バンドの)a-haっぽくはないですけどね。デュラン・デュランやデッド・オア・アライヴが持ってたヨーロッパ的なデカダンな感じや、デビッド・ボウイやロキシー・ミュージックとかのグラムっぽい感じは、今までノーナにはあまり無かったんですけど、今回、それができたのは大きいですね。“A-ha”が1曲目になってイメージを広げたと思う。
■続く“Hey, Everybody!”がまたポップな曲ですね。
郷太:これは“A-ha”とは違った意味で、何年かに一度書ける曲、すごく自信作ですね。僕は9歳ぐらいから自分で作詞作曲を始めたんですが、26年目にして、こんな歌詞が書けたかと(笑)。
奥田:とうとうこの境地まで行ったかと、驚いた(笑)。
郷太:サウンドとメロディと歌詞が合体した感覚が個人的にすごくキた。“Hey, Everybody!”ってタイトルもくだらないというか、僕は作詞作曲について26年、一生懸命考えてやってたんですよ(笑)。その自信作のタイトルが“Hey, Everybody!”なのが、到達点として面白い(笑)。僕らもずっとバンドやってますけど、この曲のサウンドは2008〜09年にしか思いつかないアイデアだと思う。こんな曲なのにヘヴィなギターが入ってたり、そのミックス具合がすごく09年的だなと思えたので。とても気に入ってます。
■Aメロからサビの飛躍がすごい(笑)、「ありをりはべりいまそかり」って歌詞が飛び込んできて。
郷太:古語を投入みたいな(笑)。「ありをりはべりいまそかり」って出た時、なんか覚えてはいたんですけど、調べたら「いる、います、いらっしゃる」で、「あり」が一般人から天皇陛下まで、どんどん敬っていく言葉なんですね。色んな奴いるけど無礼講的に盛り上がろうみたいな。歌詞の内容にも合っていたので。言葉重視でしたけどね。
奥田:AメロがOLの生態みたいな歌詞で始まるのが、笑っちゃうんだよね(笑)。それが途中で関係無くなるし。
郷太:「バスの定期〜」って始まって、Aメロだけ女の子目線で、2番とサビは男目線なんですよね(笑)。
■タイトル曲“GO”はRomancrewと一緒にやってますね。
郷太:僕ら、ライムスターの宇多丸さんが大学の先輩でもあるし尊敬してて。ライムスターのライヴをよく見に行ったりしてるんですけど。2、3年前にライムスターのライヴのゲストでRomancrewの3人が出てきた時、良いグループだなって感激して。いつか一緒にやれたらなって思ってたんです。彼らもノーナの事を気に入ってくれてライヴも見に来てくれてたんで。“GO”を作った時、プロデューサーの矢野さんから「若い世代のヒップホップ・グループと一緒にやったらどう?」って言われ、Romancrewを誘いましたね。自分らよりも若い世代と一緒にやれたのはノーナにとってもすごく良かったし、彼ら自身もバンドの中で歌うのは珍しかったみたいで、楽しんでくれてましたね。
■“GO”は矢野さんが作曲されてたり、“Still”は松尾潔さん、深沼元昭さんと作詞作曲をやってますね。そんな流動的な形でできるのも、バンドが良い状態だからですかね。
郷太:共作は何度かありましたが、矢野さんが作ったのは初めてなので、それもチャレンジでしたね。歌詞でも、松尾さんはすごく尊敬する作詞家でプロデューサーですし、いつも気にかけてくれてたので。自分の歌詞を歌う所から一回離れ、シンガー西寺郷太として作詞家にノーナ・リーヴスの歌詞を書いてもらおうと。例えば自分が去年、Jackson vibeをプロデュースした時、僕が曲を書いて歌詞はグローバー君と共作って事をやったんですけど、自分もそういうのが必要じゃないかって感じたのが大きかった。僕、マイケル・ジャクソンが大好きなんですけど、マイケルの代表曲でもマイケルが書いてない曲はある。バンドだとそういう事はやりずらいんですけど、今のノーナなら頼んでる風には捉えられないと思うし、魅力を広げられると思うので。
こういうノーナを続けられるなら、
俺達まだ大丈夫
■“1989”の歌詞は郷太さんの実体験ですか?
郷太:あまり実体験を歌詞にした事ないんですけど、これは本当に僕の歌ですね(笑)。サッカー部の補欠で音楽大好きで、東京に行ってバンド組もうとか思ってた奴の歌。ちょうど中学を卒業した年、中3と高1が1989年で、平成になった年なんですよね。その秋くらいにベルリンの壁が崩壊したり天安門事件とかあって。そういう意味で、すごくエポックな年ですけど、これはどちらかと言えば、中高生の自分を象徴した年号として出てきたというか。
■その頃を振り返ったきっかけがあったんですか?
郷太:20年ぶりに同窓会をやったんですよ。その連絡が入った頃、なんとなく「みんな、どうしてんのかな?」って思ってたんです。京都の学校だったので同窓生とほとんど会わずに大人になったので。……中高生だった時の自分の気持ちが出たのかもですね。「若いつもりだけど、俺達35か」みたいな気持ちもあったので。この歌詞は最初、自分の歌として書いたんです。東京に行って同じような音楽好きな奴いないかな?って部分は、やっぱり僕はすごく考えてたので。大人になると同じ趣味や考え方だったりで仲良くなったりするけど、小中学校って、単にそこに生まれたってだけで集まった仲間じゃないですか。だからそれが許されなかった時代に感じてたジレンマというか「この音楽いいなって言える奴、どっかにいないかな」って、ちょっと悲しい気持ちになったのを思い出した。ノスタルジーな気持ちで、あの頃に戻りたい的な歌じゃなくて、どっちかって言うと「あの頃、最悪だった」って歌で、今は楽しいよ、今からだよねって歌です。
■それを歌わないと、気が済まなかった感じですかね。アレンジもプリンスの“1999”を彷彿させるような。まぁアルバム全体的に20世紀の質感がありつつも新しくて。
郷太:それを本当に目指してたので。プリンスは大好きで……今まで3人が影響受けたアーティストの中で、今作で1人挙げるならプリンスかもしれないですね。3人にとってプリンスはデカかった。それにプリンスって多作家で、何年もアルバムが出ないとか無かったし、色んなスタイルでライヴもやるし。続けているという精神的な意味でも、すごく教えられましたね。1〜2年に1枚ちゃんとアルバムを作ってくれたプリンスにありがとうみたいな。
■この先、ノーナ・リーヴスがどう変わってもやっていけるという確信が持てたアルバムが、今回できた感じですね。
郷太:まさにそう思ってたんですよ。だからこれができたのは、すごく嬉しかったです。今までも何度か、そんなタイミングがあって、その時々で「これなら後5年ぐらいできるかもしれない」って、タフに続けられてこれたんですけど、今回は新しい服を見つけて、一回裸になってから着たような感じだったんです。色んな人と仕事もしつつ、こういうノーナを続けられるなら、俺達まだ大丈夫じゃないかなって(笑)。芸術的な意味でも生活的な意味でも、すごく確信を持てたアルバムですね。
■アルバム名はどうやって決まったんですか?
郷太:自然に。『GO』の続いていく感じ、歩いていく感じがいいなと、ともかくやるってこと。それが結果的に今の時代に必要なメッセージなのかなって気もしますね。
■全国ツアーも始まってますが、どんな意識で臨んでます?
小松:ずっと6人編成で演ってたんですよ。3人+Cho、Key、Bって形で、ある程度、固まってきてたんですが、『GO』もそうですが、意識を変えたんです。安心して演れる事を一回取っ払って、素っ裸な感じでできないかなと4人編成で始めたんですよ。僕ら元々、そんなたくさんライヴを演るバンドではなかったので、多分、このツアーでデビュー1年目ぐらいの人達のような経験するんだろうなって想像してるんですよね。6人編成は華やかだし、お客さんは安心すると思うんですけど、それをずっと続けてても……こう3人の火花が散ってるようなライヴに僕は興味があって。ツアーが終わった時にはそんなライヴができたねって、感想になってたらいいなと。
奥田:サポート・ミュージシャン入れて音を厚くして、安定感を活かしてやる方法も素晴らしいと思うし、ずっとそれでやるのも手ですけど、今回、こういうアルバムを作ったのも、そもそもそれを一回止めようって事なので。
小松:ライヴが単純に若返ると思うんですよね。6人で演っていくと円熟味は増すと思うけど、それはそれでどうなんだ?って気持ちもあって。そこを探るライヴになれば。
■最後にファンと読者に何かメッセージを。
郷太:ノーナをずっと応援してくれてる人には本当にありがたいと思っています。ノーナ・リーヴスの名前は知ってるって人には、今回は1stアルバム的な気持ちでもう一回作ったアルバムなので「デビューしてから長いバンドだから」って先入観無しに、初めて手に取るバンドのような気持ちで聴いてほしいです。
Interview & Text: 田代洋一
|