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繊細で美しすぎるほどのメロディ。
そしてその“歌”は勇気と希望を与えてくれる……。
フランス映画の『DIVA』をご存知だろうか?グラスヴェガスの音を初めて聴いたとき、最初に浮かんだのはこの映画のワンシーンだった。映画の中でDIVAが歌うアヴェ・マリア。静穏で、美しく響く歌声。しかしその裏には、危険な香りと、秘められた何かが隠されている。グラスヴェガスはまさに、その両方を持ったバンドだと直感で感じた。そう、まるで『グラスヴェガス』という架空の映画を観ているような感覚。それは、私が初めて出会う音だった。
グラスヴェガスは、スコットランドのグラスゴーで結成。
James「僕は自分のバンドに、胸を張って、いじけたところなんてひとつもないような名前をつけたかったんだ。そして、なめらかに口から出てくるような、呼びやすい名前がいいと思ったんだ」
そんな彼の考えのもと、名付けられた“グラスヴェガス”。その由来は、地元グラスゴーのブルーカラーの気骨あふれる精神、そして24時間眠らない街、ラスベガスと合体させ誕生した。メンバーは、ジェームズ(Vo)、ラブ(Gt)、ポール(B)、キャロライン(Dr)の4人だ。
James「メンバーはみんな、学校の友達とかだったんだ。もともと音楽の好みが似てたんだ。ギター持つようになって、みんなで音を出したりして。自然な流れだったと思うよ。」
ジェームズとラブは従兄弟同士、そこへ同級生のポールが加わった。そして地元の古着屋で働く、人目を惹く服装の彼女キャロラインと出会う。友達になったジェームズは、彼女をバンドに誘った。当時の彼女はドラム経験ゼロだった。バンドはドラム・マシーンを買い、曲を作り始めた。こうして活動をスタートさせた彼らは、ある人物と運命的な出会いをする。そう、それがあのオアシスやマイ・ブラディ・ヴァレンタインなどを見出した、元クリエーション・レコーズのアラン・マッギーだった。多くのバンド(後に大物になった)が巣立った登竜門として名高い、グラスゴーにあるライヴハウス〈King Tut's Wah Wah Hut〉で、彼らのライヴを観ていたアラン・マッギーの目に止まったのだ。彼は、「ジーザス&メリー・チェイン以来の衝撃!」と評し、そしてそれは、瞬く間に多くの音楽関係者に知れ渡り、絶賛され注目を浴びるようになる。
彼らのサウンドは、どこか懐かしい。始めて耳にした時、自分の身体の奥底で眠っていた“何か”が目覚めた気がした。彼らには他のアーティストとは違う“何か”を感じたのだ。とても現実的な詩ばかりなのに、悲しさや、苦痛、迷いばかりだけではなく、なぜだか真っ直ぐ前をむいて歩こうとする自分に出会う。ジェームズの書く詩はすべて現実的で今までにありそうで無かった内容ばかりだ。だから新鮮でいて共感できるのかもしれない。それは、彼らの育った環境が影響しているのだろうか?
James「もちろん。アーティストを取り巻く環境は確実に影響すると思う。アートや音楽、曲や歌詞においてアイデアはグラスゴー限定のものがたくさんあるよ。それに僕の曲のテーマは、僕が忘れられなかったことたち、そういうことなんだ。」
そして、彼はこう続ける。
James「僕たちの音楽をまだ聴いたことのない人にはこう説明するよ!自分たちの限界も考えないで、馬鹿な人間が集まって作ってる音楽たちって言うかな。キャロラインはドラムも叩けなかったし、僕はギターがやりたかったのに、親に告白できずにいたし。つまり、僕たちの音楽は自己表現で、それは暗闇の中にほのかな明かりを灯すようなこと。迷いや悩みがあっても、バンドにいるとそれが少し和らぐんだ。音楽を通して自分を表現できるからかな。詩で表現したり、ライヴで表現したり。それが僕たちの力の源のひとつだと思ってるんだ。」
彼らのデビュー・アルバム『グラスヴェガス』は、日常では気づかない、しかし現実に起こっている様々な出来事を言葉にして並べる。それをこんなにも素直すぎるくらいに表現するバンドがかつていただろうか?そして、繊細な中に強さを感じさせてくれるメロディ。すべての音をこんなにも美しく心に響かせるバンドはそうはいない。
1曲、1曲が映画のワンシーンのように、目を閉じると、自分がその中で共演してるような気持ちになる。ベートベンの「月光」の演奏をバックに、ジェームズが詩を朗読する“スタブド(M-8)”絶望感のようにも響くが、これこそ、ジェームズが言っていた「暗闇の中のほのかな明かり」を感じられる1曲じゃないだろうか。最後を飾る“アイス・クリーム・ヴァン(M-10)”。タイトルとはまるで正反対のような、いまの汚れている世界について歌ったものだが、穏やかな波のようにも聴こえてくる音が、世界の苛立ちを押さえようとしているようにも捉えられる。こういう内容を歌うと毛嫌いする人もいるだろう。でも彼が言うこれが「現実なんだ」と胸が締めつけられる思いでいっぱいになった。
「なぜ人間は理解できないのだろう。
みんなを支配している権力の裏側を
喧嘩を仕掛け、あおってる連中を
融和を阻止し、分裂を保たせてる連中を
グロテスクな景色が広がる地上を破壊し
宗教を徹底的に分け、ひどい人種差別的な考え方で
栄光の日々よ、戻れ
活発な市民参加
そして純粋なコミュニティと
信仰の自由を!」 (By Ice Cream Van)
ありきたりかもしれないが、グラスヴェガスは、勇気と希望を与えてくれる、そんなバンドかもしれない。
そしてきっと、みんなも共感できるだろう……。
Interview & Text: Limo Hatano
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