No Regret Life


僕らはこんなノーリグを待っていたんだ!
1年半振りのアルバム『Wheels Of Fortune』  

 待っていたよ、こんなアルバムを! こんな“うた”を!ノーリグレットライフが、8月に発表したシングル“Can't Explain”に続き、約1年半振りとなる3rdアルバム『Wheels Of Fortune』をリリースした。もう既にCDを持っている人もいるだろう。でも、もし、まだ手にしていない音楽ファンがいるなら、ぜひ聴いて欲しい! 小田のエモーショナルなハイトーンボイスの力強さを。1年半の溢れ出した感情をぶつけた歌詞を。松村、橋口の過去最高にエッジの効いたタイトなサウンドを。ノーリグの資質であるメロディーの良さや本来のポップ感・躍動感は残しつつも、“ハルカカナタ”の未来へ続く、強力なエネルギーに溢れたアルバムが仕上がったのだ。このアルバムに込めた想いを3人にじっくり訊いた。

■実は正に今日、アルバムがリリースされたわけですが、今の心境としてはいかがでしょう?
(※このインタビューは10/22に行われました)
小田:遂に世に出たなぁというちょっとした安堵感と、まだ実感のない感じがあるかな。
橋口:今日になった瞬間に、友達からたくさんメールがきて。その時に「やっとこの日を迎えられたんだな」っていう実感が湧きましたけど……これからツアーをやって、色んな状況を見て、徐々に色々実感するんじゃないかなって思いますね。
松村:……(笑顔で無言)。
小田:照れてないで、喋りなさいよ(笑)。
松村:(笑)まずは、いろんな人に感謝だよね。スタッフにもお客さんにも──ありがとうございました、っていう感じかな。
■“Can't Explain”の取材のときも少しお伺いさせてもらったんですけど、このアルバムに辿り着くまでを振り返ってみるといかがでしたか。
小田:とにかく、長かったですね。
橋口:時間が空いてしまったこともあるけど、アルバムが出来上がってみたら、この作品を作るための必要な時間だったんだなって思いますね、俺は。もちろん思い通りにいかないことも沢山あったけど……これだけ良い曲が揃ったので、必要な時間だったんだな、と。
■捨て曲ないですもんね。
小田:ありがとう。……ライヴ、どうしようかねぇ(笑)。
■ライヴで曲が切り替わるのも久々になりますもんね。
小田:今はもうツアーモードになってるけどね。身体も切り替わるし。色んなことも起こると思うし、CDとは違うライヴ感も出てくると思うし──それを発信していきたいですね。


『Allegro』はキラキラしてるアルバムだったけど
凄くギラギラしてるよね、このアルバムは

■なるほどなぁ。具体的な作品のコンセプトは考えてたりしたんですか?
小田:全く! 最後に“ライヴとリンクするもの”って決めた感じなんだけど。とにかく「良い曲」をっていう感じだったね。アバウトな基準だけど(笑)。
松村:最終的に和奏が歌詞を書き上げてきたときに、俺たちの1年半っていうか──そういう感じに聴こえたかな。後付けなんだけど、テーマとしてそれはあるよなって。『Allegro』は曲の構想段階からある意味テーマがあったけど、今回はがむしゃらにやってたらある意味テーマが見えたというか……人となりが出てる歌詞になってると思うんですよね。
■実際書いていたときは意識してたんですか?
小田:そこまでは考えてなかったかな。本当にがむしゃらに書いてたよ。結局その1年で思った気持ちが出ちゃったんだろうね。『Allegro』はキラキラしてるアルバムだったけど……凄くギラギラしてるよね、このアルバムは。人間の泥臭い感じが出てるし、お洒落なアルバムではないじゃない?(笑)
■むしろ男臭いアルバムだと思う(笑)。
小田:アハハ。メロディーは“泣きのメロ”が良いよね、とかも話したね。ちんちくりんのコードも多いけどね(笑)。
■ちんちくりん(笑)。レコーディングは実際どうでした?
小田:本チャンのレコーディングはそんなに時間掛からなかったよね。あ、俺は少し掛かったか。
松村:スタジオでセッションする時間が結構あったんだよね。それを家に持って帰って聴いて、自分の中でフレーズを膨らませて──っていう作業ができたから。「ここまでやったら、これ以外ない」っていうところに、ギリギリまで近づけてプリプロに入って、レコーディングに入って、3日間連チャンで録った。そもそもライヴを意識している曲が多いから「ライヴでこれをこう弾いたら格好良いだろうな」っていうところから入ったんだけど、歌は聴かせたいからそこはじっくり考えて……シンプルな方向に行きたいからコーラスも入れず。コーラスは『Allegro』でやったから良いかなとも思ってたし、そこは挑戦して。そういう意味でも、有意義な時間を使いながらの作品作りが出来たと思う。何気に細かいことはしてるけどね。 “ストレンジャー”(6曲目)の終盤の間奏のあたりから曲に戻るところとか、パンクバンドみたいなアレンジだし(笑)。
小田:シンプルになったって言ったけど──ドラムとベースは結構やりたい放題やってるかな、と俺は逆に思うねぇ(笑)。
橋口:だけど、パキッとしてる分、ギターを重ねる部分は前よりもシンプルになったと思う。コード感も綺麗に出てるし、聴いてて気持ちいい部分がたくさんありますね。
松村:……潔くなったよね。
■あ、分かる!
橋口:「これもやっちゃって良いんだ」っていうことに飛び込めたし。曲にしても、歌詞にしても……“1980” (9曲目)みたいな歌詞って今まで絶対無かったじゃないですか。そういうところにも飛び込めた。『Allegro』のように整頓されたアルバムではないけど、色んなことが出来たアルバムだと思いますね。
■確かに和奏君の生い立ちを描いた “1980”の歌詞は最初意外でしたね。未来への希望も感じたんですけど、〈ほら落ち着きなさいって/よく言われたもんだ/ただの一つだって/守れてないや〉ってところとか、思わず自分を投影してしまったり(笑)。
松村:そうだね。生い立ちっちゃ生い立ちなんだけど、みんな同じなんだなって思ったよね。この曲が来たとき。
橋口:こういう形でも曲が出せたってことがデカいよね。


ライヴの感じをタイトにエグく出したかった

■個人的には、和奏君のハイトーンボイスから勢いよくスタートする1曲目“ハルカカナタ”がとにかく力強くて。サウンドにしても、歌詞にしても。
小田:「こいつ、駅伝で言う一区だな」みたいな感じで、1曲目っていうことは意識してた曲なんだよね。スタートダッシュというか(笑)。凄くアグレッシブな曲になりましたね。
■はい。気迫を感じるというか。作ったときにこういうモードだったのかな、と思って。
小田:うん、そうだね。『Allegro』を作り終えた後くらいに、この曲を書き始めてたりしたから、入り口にも気持ち的にもちょうどいいなっていう気がしてて。曲を仕上げていくにあたって、これを1曲目にくると凄い緊張感が生まれるなって。ライヴが見えるってことにしても、この曲は的確だなって思ったし。単純に格好良い感じにしたかった。
■当たり前なんですけど『Allegro』とはまた違ったアルバムなんだな、と思いましたね。
小田:そうだね。『Allegro』は、音的に──なんて言うんだろう、甘い音というか。緻密なアレンジで、幅広くて……1曲、1曲敢えて色をバラバラにして作っていく感じだったのが、今回は全曲エッジを立たせて、ライヴの感じをタイトにエグく出したかった。
■良い意味で遊びがない気がしますね。リズムの面白さみたいなものは出てると思うんですが──。
小田:ああ、そうかもね。
橋口:そういう曲が多いですね。でも、シンプルになったっていうのがデカかった部分があって。アレンジをする時に、音数が少なくても、その一音をよりインパクトのある音にしたかったというか。そういうものを選んでいったら、パズルのようにピッタリはまっていって。通して聴いたときに「おもしれぇ!」って思いましたね。
■シンプルになったっていうのは、意図的なものですか?
橋口:曲がきた時点で「こういう風にアプローチしたら格好いいんじゃないかな」っていう風に呼ばれた感じがしましたけどね。そしたら、よりシンプルで、インパクトがあるものになってたっていう。悩んだりもしたけど、出すアイデアがどんどんはまっていきましたね。だから、時間が経って今聴いても「ここ、やっぱりああすれば良かった!」ってことは一ヶ所もないです。気持ちいいですね、聴いてて。
■7曲目“パラサイトシティ”がこのアルバム唯一の“遊び”的な部分だと思うんですけど──。
小田:そうだね(笑)。完全にお遊び的なところがあるかな。
■“パラサイトシティ”の最後に〈この世界は今/何が憑りついてんだ?〉って一言があるんですけど──これは何をさしてるのでしょう。
小田:なんスか、突然(笑)。でも、テロがどうとか、殺人事件がどうとかを歌ってるわけではなく。
■うんうん。
小田:自分も含めて、東京って目的を持ってる人が多くて、さり気なく散歩をしてる人っていないじゃない? 東京に来たときに初めて思ったことが「東京って人が多いなー」ってことだったりとか……あと、電車の中の不思議な空間とか見て、色々感じてさ。それを面白おかしく書いたんだけど(笑)。もっと、コミュニケーションに温度があって良いんじゃないかなって思うんだよね。取材にしてもそうだと思うんだけど……事務的に終わらす人もいれば、愛を持って接してくれる人もいる。もし選ぶとしたら、それは後者でしょ? そういうことがコミュニケーションの形だと思うから。だから出来るだけ自分は……「接する」っていう部分に対して考えるようになったっていうか。
■コミュニケーションって何にしても大事ですからね。聴き手へのコミュニケーションを特に感じた “ヨロコビノウタ”の歌詞は、前作のラストの “アンダンテ”の延長線の曲であり、返答なのかなと思ったんですよ。“アンダンテ”では〈「さよなら」を成り行きの言葉じゃなく/君に告げよう/そう、いつだってここで待ってる/本当は、もう少しだけ/この瞬間を鳴らしていたい〉っていうライヴでの想いを書いた曲だったじゃないですか。それに対して、今回も、“ヨロコビノウタ”では〈「ただいま」と言える場所が/ここじゃなくても/ただ「おかえり」って言ってくれる/君がいればいい〉〈心のままに/この想いを鳴らすよ/溢れ出す歓びを/帰ろう君の待つ場所へ〉と歌っていて──あ、もしかして全然違います?(笑)
小田:意識はしてなかった(笑)。なるほどね。この曲は……ツアーで各地回っているときに、ライヴで久々に「帰ってきました!」っていうと、お客さんが「おかえりー!」って言ってくれるんですけど、そういうのってすっごく嬉しいんですよ。「待っててくれる人がいるんだ」と。アルバム出すまでに時間掛かったし、その間に俺たちに興味を無くした人もいるだろうし、このアルバムで初めて俺らを知る人もいるだろうし。それでも、歌い続けることが俺らにとってのやるべきことって言うか……だから、「おかえり!」って言葉を言われたときに、甘えとかじゃなく救われるというか。それがモチベーションで良いんだなって思って。そういう気持ちもありますね。


今ここで鳴らされてる音が全て

■今回ジャケットの雰囲気がいつもと違いますね。
小田:格好いいよね。今回は俺も『Wheels Of Fortune』のイメージを色々リクエストをして……仕上がったら「これはヤバい」と。俺、感動しちゃって。物凄いグッときちゃった。ジャケみてご飯食べれるな……あ、言い過ぎた(笑)。
■(笑)このタイトルの意味を聞いてもいいですか。
小田:“運命の輪”。この1年何してきたんだろうなっていうところから言葉を捜して。ネガティブでもなく、前向きな明るさでもなく。スムーズでもないけど、何かを起こしてきた一年っていうことを車輪に例えたら──ギーギーうるさいけど転がってる車輪のイメージだった。そこからですね。意味深だなって思って。
■なるほどなぁ……ギーギー音を立てながら前に進んでる感じかぁ。いや、私、今回のアルバムは、これは難産だったんじゃないかなと思ったんですよ。それだけ1曲、1曲に、それだけ言葉の重みがあったんですよね。
小田:ああ、なるほどね。そぉねぇ……。テンションで書いた曲もあるけど、もっと自分らしい言葉をより捜したかな。
松村:あ、でも“Can't Explain”(シングル曲)くらいかな、難産なのは。前から曲はあったから。あの一本の筋みたいな曲が出来たことで他の曲が動き出したからね。あの曲が出来て「あ、やっと転がる!」って確信になって。
小田:今回の精一杯がこのアルバムで、来年はこのアルバムにどれだけのりしろつけられるかなって。明日からツアーが始まって、新しいストーリーが始まるわけじゃないですか。何も具体的には考えてないけど、圧倒的な4枚目を作るしかないかな、と。だから「難産だから苦しみました」っていうよりも……“苦しんだからイコール楽曲の重み”って訳にもいかないし、今ここで鳴らされてる音が全てなんだよね。それを今から何ヶ月か掛けて伝えにいくよ。
■ツアー、楽しみですね。
小田:ホントの意味で出来ることってそれしかないですから。俺たちも出来る限りライヴに行きたいし、いろんな街に行きたいし──ケンカしてきます。別に、武道派ではないけどね(笑)。なんて言うんだろう……気持ちを届ける、伝えるっていうんだけど、一番大事なことって「発信する」っていうことだと思うんですよ。俺たちがライヴに行かなきゃ何も起こらないし、何もしないで何かを共感してくれって凄くおこがましいと言うか。でも、こういう曲を「いいよね」って言ってくれる人を何人増やすかっていうことが大事だと思うんです。それを全国各地で目の前でやってくるっていうこと。その上で気持ちが届いたらいいよね。

 

Interview & Text: 逆井真理