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稀代のロックバンドが見せる素の表情
それが“サーフ ブンガク カマクラ”
アジアン・カンフー・ジェネレーションの勢いが止まらない! 今年だけで考えても高水準な作品を発表し、ライヴを繰り広げている。3月、アルバム『ワールド ワールド ワールド』のメッセージ性が強い作風に圧倒させられ、4月より大規模な全国ツアーを行う。6月、ミニアルバム
『未だ見ぬ明日に』で前作に劣らぬ完成度に唸らされ、7月、アジカン主催のフェス『NANO-MUGEN FES.』を2年ぶり7回目の開催。もちろんコンピレーションも発売。横浜アリーナ2デイズで洋邦問わない全16組のライヴと感動的な空間が記憶に刻まれた。9月、『WEEZER FESTIVAL』にて彼らが敬愛するウィーザーと競演。そして10月、シングル『藤沢ルーザー』(カップリングはレンタルズのカヴァー)に続き、11月、湘南を舞台に「江ノ電」の駅名を冠した全10曲のコンセプト・アルバム『サーフ ブンガク カマクラ』が発売される。今後、趣向の異なる2本の全国ツアーも控えている。
2003年のメジャーデビュー時から火が点いたアジカンの人気と評価。それ以降もアジカンでしかない冴えたやり方と、細かいジャンルに囚われないロックを放ち続ける。そして今も尚、誰よりも精力的なアジカンの活動、そのあふれる創作意欲に頭が下がる。なぜ、アジカンだけが成し遂げ続けられるのか? それは最新作で聴ける、肩の力の抜け具合、学生時代から慣れ親しんだパワーポップや、そういったバンドへの憧憬が感じられるサウンドにヒントが隠されている気がする。そう、『サーフ ブンガク カマクラ』は決して、カップリング曲を含む企画盤の類ではない。つまり必聴盤ってこと。
スコーン! とストレートなものを作りたい
■2008年のアジカンの活動が非常に精力的ですが、そのワーカホリックぶりはどういうことでしょうか?
後藤:でもあまり働いている気分はないですけどね。正直、そんなに忙しくないよね?
喜多:『ワールドワールドワールド』と『未だ見ぬ明日に』って作品は、ほぼ2007年に作っていたので。皆さんが思っているよりはじっくりやっていたかもしれないです。
■でも1年で3枚リリースする事も、なかなか無いと思いますし。ツアーもやられて、〈NANO-MUGEN FES.〉もやりましたし。すごく働いているなと思えるんですが。
後藤:きっと、1年でこんなに出すことはもうないでしょうね。人からは「働いてるなぁ」って言われるんですけど、本人達はそんなに自覚がないんです。去年の作っている時の方が忙しかった気がしますね。
■『ワールド ワールド ワールド』のような、スケールの大きいアルバムを作るのは、よっぽど神経を遣ったと思いますが、その反動が今作に出ているのかなと。
後藤:そうですね。やっぱり『ワールド ワールド ワールド』はみんなでかなり時間を掛けてセッションして、アンサンブルやアレンジを組み上げていったんで。ちょっと考え込む癖ができあがってしまって。後から聴くと「考えられてんなぁ」って思う。そういう状況が続いてたんで、今回、もうちょっとスコーン!とストレートなものを作りたいなって思ったんです。それはやっぱり前作、前々作『ファンクラブ』くらいからの自分達のモードへの反動っていうのは確実にありますね。
■(06年11月リリースの)シングル『或る街の群青』のカップリングで“鵠沼サーフ”を作った時点で、もう今作のコンセプトの構想はあったんですか?
後藤:そうですね。“鵠沼サーフ”くらいでぼんやりと一発録りの曲で1枚作ってみたいなって思いついて。練っていく内に、次の“由比ヶ浜カイト”を作ったくらいで「これはもう江ノ電がいいな」と思って。曲も最初から駅名の順番通りに並べて作っていけば、曲への取り組み方も限定的になって、一つルールというか縛りが生まれるじゃないですか。まったく自由なものの方が難しかったりするんで、逆に縛りがあることでイメージも膨らむし、そういうやり方もいいんじゃないかなって。
■ただ構想〜制作期間としては長いですよね?
後藤:構想練ってる時間は今までで一番短いですけどね。スパーン!と出口決めちゃえたので。いつもは曲を書きながらアルバムの形がおぼろ気に見えてきて、最後の2、3曲で形を決めにいくってやり方なんですけど。今回は最初に完成図がちょっと見えてたので。
■このバンド・サウンドはアジカンのルーツにあるような音作りですか?
後藤:みんなにとってそうかは分かんないですけどね。元々アマチュア時代にやっていた感じに似てはいるけれども、やっぱり形は違うし。正直、僕の趣味が強いと思います。こういうパワーポップを自宅でよく聴いているので。ストレートでポップなモノを演りたいなって。もちろんウィーザーっていう、4人のフェイヴァリットなバンドも頭には思い浮かべましたけど。
■ウィーザーとは先日、競演されてましたが、また『藤沢ルーザー』のカップリングでレンタルズのカヴァーをやったりと、やっぱり皆さんそういう音が好きなんですね?
喜多:好きですね。
後藤:好きですよ。ウィーザーはやっぱ1stと2ndは両方とも「青春の1枚」として挙げられるくらい聴いているし。レンタルズの2ndアルバムもすごく聴いたし。僕は1stよりも2ndの方がしっくりハマリましたね。当時、マット・シャープが抜けてウィーザーが休止中で「ウィーザーの新譜が聴きたいんだよな」って気持ちをレンタルズが埋めてくれた感じがありましたね。
■ちょうど学生時代になるんですかね?
喜多:大学生の頃ですね。
■その頃もカヴァーとかされてたんですか?
後藤:当時はあまりウィーザーやレンタルズは演らなかったですね。僕らは基本的にはずっとオリジナルばかり作ってたので。ウィーザーをカヴァーしたのは1回だけあって。それは下北とか渋谷でライヴをするようになった頃、1曲カヴァーを演るってイベントで、ウィーザーの“You Gave Your Love To Me Softly”って『El Scorcho』のカップリングに入っている曲を演ったのは覚えてますけど、案外、僕達はカヴァーしたことないんですよ。
■でもそんなサウンド像は皆さんに染みついてますよね。
後藤:染みついているかは分かんないけど、確かにパワーコードを使ったり、オクターブ奏法を使ったりっていうやり方はウィーザーの影響はあって、僕らは割と好んでやるやり方の一つではありますね。
神奈川に住んでいるから、愛着はありますね
■あとコンセプトで江ノ電の駅名を入れた曲を作るいう、これは江ノ電好きが高じてですか?
後藤:特に江ノ電が好きって訳でもないんですよね(笑)。あの辺りの風景が、なんとなくいい風景だなっていうか。みんな神奈川県民で、そんなに頻繁には行かないですけど、いつ行ってもやっぱり海があって素敵な電車が走っていていい街だと思うし。そんな所に青春とか甘酸っぱい映像がよく合うなと思ってモチーフとして選んだので。僕らは江ノ電フリークじゃないですけど江ノ電は好きですよ。
■ちなみに僕も先日、取材の下調べで行ったんですよ。
後藤:あ、そうなんですか。
■実際、江ノ電に乗ってみたりして、歌詞に出てくる風景も本当にあって。例えば“鵠沼サーフ”のサーフショップが並んでる所とか、“七里ヶ浜スカイウォーク”に出てくるファーストキッチンにも行きましたね(一同笑)。
後藤:まぁ、普通にファーストキッチンですけどね(笑)。なんか独特ですよね。「こんな海沿いにファーストフードあるんだ」って。
■あと“由比ヶ浜カイト”の鳶が飛んでいる風景とか。
後藤:あの辺の鳶は気をつけた方がいいですよ。襲われるって話なんで。
■看板に“鳶に注意”って、注意書きがありました。
後藤:ハハハ(笑)、意外とハンバーガーとか持ってかれちゃう人、多いらしいですね。
■後藤さんと山田さんは元々静岡ですが、皆さん神奈川県在住ってことで、やっぱり地元愛みたいなのはあります?
後藤:ありますね。僕とか山田もかれこれ10年以上神奈川県に住んでるんで。もう人生の3分の1くらいは神奈川に住んでるから、愛着はありますね。
■喜多さんと伊地知さんはもうずっとですね。
伊地知:僕、鎌倉出身なんです。だから江ノ電も通学とかで乗ってたので、今回、嬉しいですね。そのファーストキッチンにもよく行ってたし。
■意識されているか分からないですけど、ある意味、サザンオールスターズの次の世代の湘南賛歌なのかなって。
後藤:どうなんですかね(一同笑)。特にそういうつもりはないんですけど、そう言ってもらえたら悪い気はしないですね。
喜多:否定はしないんだ(笑)。
後藤:否定はしたくないですけど(笑)、なんかおこがましさみたいなのはありますよ。“稲村ヶジェーン”とか言ってる自分達に、おこがましさみたいなものを感じつつも湘南っていいなって気持ちはやっぱりあるし。でもサザンオールスターズの後を引き継いでいるとは思わないですね。レゲエとかヒップホップの方が海っぽいっていうか。僕達、所詮インドアだからさ(笑)。潔以外ね。
伊地知:最近はインドア派です(笑)。色が黒いですか?これは散歩焼けです。
■まぁリードシングルも『藤沢ルーザー』で、江ノ電の始発駅ではありますが、海はあまり関係無い歌詞ですもんね。
後藤:藤沢駅の近くに海はないですからね。行ってみたら意外と雑多な感じで、小田急もJRもあって。そこから段々海に行く感じで。まぁ“鵠沼サーフ”も鵠沼駅っていうより鵠沼海岸の方の歌ですけど。
■アルバムを聴き進めるに連れて海に近づいて、キラキラ感も増していく感じしますね。気になったのが“稲村ヶジェーン”の歌詞、ちょっとよく解らなかったんですが。
後藤:それは「とりあえず冴えないけど踊ろうぜ」って事を言ってて、アナログレコードとか、要は音楽で踊ろうよって、ダンスタイムだって言ってるだけなんです。ポケットの中には小銭しかないし、社会的に為になることなんて自分には一つも無いと。例えばジョン・レノンとオノ・ヨーコの出会いのエピソード「yes.」って話がありますけど、オノ・ヨーコみたいなすごい女性が現れたとしても、自分はジョン・レノンでもないし、ポールやリンゴって友達がいるけど、彼らは別にビートルズのメンバーでもなんでもなくて、単にニックネームなんだって。要は自分はスペシャルじゃないってことを、ひたすら歌ってるんです。でも今日は浜辺でこのロックンロールで踊りたい、このレコードの回転で踊ろうや、と。
■ビートルズやレコードが出てくるのが疑問だったので。
後藤:だからビートルズがどうこうって言いたい訳じゃなくて、自分はスペシャルじゃないって比喩です。
■あと面白かったのが「馳せ参ず」とかけて“長谷サンズ”。WEBの日記内でクイズを出されてましたが、これだけはファンの人も当てられなかったようですね。「馳せ参ず」って言葉は普段あまり使わないですからね。
後藤:今時使ってる人は……サラリーマンとかで「そういう事なら私は馳せ参じますよ」みたいに言う人がいるかもしれないよね?
山田:僕?(苦笑)、普段使わない言葉ですけど、クイズ読んでて分かりやすいと思ったんですけどね。
■とにかく「馳せ参ず」がすごく耳に残るんですよね。あと江ノ島に行って“江ノ島エスカー”に初めて乗ったんですけど、あれは乗ってみないと分からないもんですね。
後藤:そうですよね。誰しもそういう思いをするべきだと思ってます(一同笑)。
ホールツアーを一回やってみたいと思って
■今回リリースされて、ファンの方も江ノ電に乗りに行く人が増えるんじゃないですかね。
後藤:多分、少なからずそういう人はいるでしょうね。
■乗りながら聴いたら、ちょうど駅間と分数も近くて、若干ズレはしますが、全体の分数的にほぼピッタリですね。
後藤:それはあまり意識はしてないですけど、もう2分くらい長く作ったらちょうどよかったっぽいですね。ちょっとアルバムより長いみたいで。
■最後の“鎌倉グッドバイ”がすごくグッとくる歌詞で。なんかいいアルバムを聴いたなって感じで終われるのが素晴らしい。『ワールド ワールド ワールド』も大好きですけど、今作は何度もリピートして、いつでも気軽に聴ける感じがいいなって思います。
後藤:色んな人からそう言われるんですよね。「これからも、こういうアルバムをたまには作って下さい」って。
■それと今回、後藤さんが叫んで歌ってないですね。
後藤:特にあまり考えないで作ったら、叫んでないモノが多かった感じですけどね。自分の中でパワーポップって、そんなに叫ぶのもまた違ったんでしょうね。絶唱みたいのだとエモになってきますし。そういう熱く歌いあげるのは、またこれからもやるでしょうからね。今回はポップに、優しい部分は優しく歌うみたいなメロディの作り方がいいなと思ったので。
■ツアーが2本決まってて、まず『酔杯』の方は毎年この時期にやってますが「THE FINAL」と付いてますね?
後藤:特に意味はないんですよね(笑)。ただのツアータイトルです。
喜多:2008年の締めくくり的な意味です。
■『酔杯』が終わるわけではなく?
後藤:『酔杯』は終わらないですよ(笑)。
■『酔杯』って元々、あまり考えないで付けられたタイトルだったと思いますが、ずっとこれで行くんですか?
後藤:基本的に特にリリースと関係ないツアーは『酔杯』ですね。2009年も『酔杯』はありますね。
■来年初頭にはホールツアーが予定されてますが、今回、なぜホールツアーなんでしょうか?
後藤:簡単に言うと、やりたいからです。ホールツアーを一回やってみたいなって思って。何がどうなるのか、ちょっとまだ分かんないですけど、ホールツアーは普段のライブハウス・ツアーとはもちろん違うやり方でやりたいなと思って、今、色々計画を立てています。
■皆さん、ツアーへの意気込みの程を。
喜多:両方とも今までのツアーのセットリストとガラッと雰囲気が違うんで。さっき「THE FINAL」に意味は無いってことでしたけど、ちょっと「お!」って思ってくれるようなセットリストになってるんで、楽しみにしてもらいたいですね。ホールツアーも面白い事をやる予定です。
伊地知:前半のツアーのZeppではゲストバンドにAvengers In Sci-fiが入って、すごくカッコいいバンドなんで、それも含めて楽しんでいただいて。その後はワンマンになってまして、久しぶりのアリーナクラスですが、大きいステージでもいいライブができると思うので、がんばります。
山田:ツアーが2本ありますけど、全然違う感じになっていくと思います。今、イメトレをがんばってやってます。イメトレ大事なんです。
Interview & Text : 田代洋一
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