近藤智洋


ひたすらライヴを続け 日本全国で歌われたウタ
“二つの鼓動”が重なる ここから再び歩き出す

 05年7月PEALOUT解散。05年8月よりソロ活動開始。アコギ、ピアノを使いPEALOUT以降の世界を創り出している。06年6月、1stソロアルバム『近藤智洋』を発表。近藤が率いるバンド〈ザ・バンドファミリア〉は城戸紘志(Ds)、工藤佳子(B)、ピロ(Per)、山田貴己(Gt)というメンバー。また07年に深沼元昭(Mellowhead/ex.PLAGUES)等とGHEEEを結成。並行し活動を続ける。ソロでの弾き語りを中心に、07年は年間160本のライヴを行い。約1年半で47都道府県制覇を達成。ストイックな活動に迷いは無い。

■ここ数年のライヴの数がすごい数ですよね。
近藤:年間100本ライヴをやれたらいいなと思ってたけど、やってる内に歯止めが効かなくなって。06年にソロアルバムを出したけど、どこかに所属してる訳でもないし、メジャーの時のような宣伝の仕方もできない。じゃあ、今できるやり方って、単純に色んな人の前で歌うって事で。色んな街に自分の足で行って、少ない人数かもしれないけど、歌う事で音を広げていけたらと。
■今作の印象として、やりたい事、歌いたい事を自然にやれてるなと。表現やサウンド作りに制限無く。
近藤:そうじゃないと1人でやる意味も無いし、自分のやりたい事、自分がカッコいいと思う事しか考えてなかったから。それを出したいというか。ジャンル分けして、その傾向の曲ばかりってアルバムより、ジャンル分けされない方がいい。ビートルズにしても小さい頃から聴いてきた音楽って、枠が無い。ピアノが入ってたり、激しかったり、アコースティックだったり。昔のロックはそういうのが多いけど、今はそういうのだと「何を演りたいのか分からない」って言われたりする。でもやっぱり自分の音や歌詞で世界観を作りたいんで。自分に無いモノはしないけど。
■ほんとラテンっぽいリズムから、フォークロック、歌モノっぽい感じ、中盤にシティポップな感じもあって。
近藤:シティポップ(笑)、懐かしい言葉だね。
■そういう質感のサウンドが。あと“小さな欲望”のような、心から歌われるような歌とか、何でも入ってて「何とか」って呼び方ができない。もう近藤さんのアルバムとしか言えない。また、その歌が赤裸々になってる気がします。昔から近藤さんは夢想家だと思ってますが、同時にリアリストでもあって。例えば“二人の航海”を聴いた時、そう思ったんですよね。空想的でも、何も隠してないという。
近藤:この2年間で行った事ない所に行って、初めてのお客さんの前で歌って。どうしても俺、人見知りな所もあるので、その中に入って行くのは難しいけど、自分なりにコミュニケーションを取ろうと思って。前と比べて人との関係性を考えたりする事が、圧倒的に増えた。それで歌詞も一対一の関係になったのかなって。
■前作の“走る風のように、落ちる雨のように”を実践して?
近藤:あれは2年前に作った時、自分のテーマソングで。あるがままに歌ったり、人と接したりできたらいいなと思って。でもやっぱり難しい。少しずつそこに近づきたい。
■ライヴのスタイルも様々で、マイクを使わないでフロアまで降りて歌うとか。そういうのも自然に出てきて。それが狙った感じもなくて(笑)。
近藤:狙わな過ぎる(笑)。そういう事は何も考えず。基本的に狙った感じのパフォーマンスって好きじゃないから。その分、思った事をやる。その場で、その瞬間に(笑)。
■“草原”の歌詞に出てくる“二つの鼓動”という歌詞が、今作のタイトルというのは?
近藤:さっき言った、一対一の機会が多かったから、そういう視点の歌詞も増えてきたと思う。旅していく中で、例えば関係性も作れないまま、旅人のまま通り過ぎる街もあったり、逆に誰も知らないお店で、そこの常連さんみんなと仲良くなってたり。そういう関係って簡単に作れないけど、その中で学ぶ事や感じる事がいっぱいあって。
■例えば“小さな欲望”“甘い果実”“Rainbow Step”とか、色んな場所で思う事、体験した事が出た歌かなと。
近藤:“甘い果実”“Rainbow Step”“魔法”とか曲自体は前からあって、ライヴでは演ってたけど、ずっと歌詞が付いてなくて。“Rainbow Step”はむちゃくちゃ英語でずっと歌ってた。だからレコーディングのギリギリで書いた歌詞だったから、今の自分に一番近い歌詞かもしれない。
■“Baby Boo”“魔法”“灯がともる頃”は、さっき言ったシティポップのようなバンド・サウンドですが。
近藤:“魔法”とかのミックスもすごく気に入ってて。自分の中ではポール・マッカートニーなんだけど。ビートルズよりもウィングスの。ポールが70年代にソロからバンドを作って、みんなでツアーしてアルバムを出した頃。俺の中ではそういうイメージがある。
■『BAND ON THE RUN』ってアルバムの頃とか?
近藤:そうだね。バンドファミリアに(山田)貴己君が入って、ちょうど2年ぐらいで。それまでも一気にすぐ揃ったバンドじゃなくて、僕が桃太郎みたいに歩いて「カッコいいドラマーがいた。一緒に旅しませんか?」って城戸君にキビダンゴ渡して(笑)。次にヨッちゃん(工藤佳子)を見つけて「一緒に鬼退治行きませんか?」って。その1年後にピロ君が、そのまた1年後に貴己君が入って。約5年ぐらいかけて作ったバンドだから。貴己君に関しては、ほんと良い出会いができた。スタジオ入った時もバッチリやれると思ったし。入った頃は1stの曲が多かったけど、今回レコーディングした曲はもう貴己君に任せて、好きにやってもらって。すごく活躍してくれた。
■“小さな欲望”のギターとか。
近藤:素晴らしい。まだ若いけどすごく良いギターを弾く。貴己君が入った事によって、よりバンドらしくなって、色んなバラエティある曲を演っても統一感がある。
■昨年、ザ・バンドファミリアって名前にした意図は?
近藤:バンド名を付けた方がいいかなって。前の近藤智洋バンドって言うより、もっとバンドっぽく。色々考えてバンドファミリアに。KDTHもfamiliarだし(笑)。
■ライヴですが、まずツアーが7月ですね。
近藤:7月に東名阪で。後は1人で北海道、九州に。その後もどんどんライヴはあるけどね(笑)。バンドでの大阪と下北沢はワンマンなので、観てほしいですね。みんな忙しいけど、ワンマンは定期的に半年に1回はやりたい。
■今作も近藤さんの自主制作で出されますが。
近藤:元々1stの時、リリースする所を探してたけど、どこも無かったんで自分でやるかって(笑)やり始めたから。でも単純にやる事は増える。ライヴのブッキングだけって訳にはいかないから、レコーディングするにはまずミュージシャンであって、プロデューサーやディレクターの役割だったりも。それが出来てから、宣伝とかもあるんで、発送したり色々とあるから大変だけど、その分、全責任は自分になるから、分かり易くていいかなって。
■近藤さんぐらいの活動の中で、よく時間作れるなぁと。
近藤:俺もびっくりした(笑)。このアルバムを作る時はライヴもしばらく空けようと思ってたけど、気づいたらずっとライヴが入ってて(笑)。でも空いた日を全部レコーディングに使ってできたから、もっとやれるかなって、そう思っちゃえる自分が怖いよね(笑)。

Interview&Text : 田代 洋一